2024年12月6日(金)

サムライ弁護士の一刀両断

2016年1月22日

 今年のお正月は、有名タレントであるベッキーさんと、バンド「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音さんの不倫報道が大きな話題となりました。いち早くスクープした週刊誌は、渦中の二人が、離婚届のことを「卒論」などと呼んでやり取りをしているLINEの画面写真などを掲載し、センセーショナルに報じています。 

(Sports Nippon/Getty Images)

 この件については報道が過熱する一方で、インターネットなどには、「芸能人だからといって、個人的なメッセージを勝手に公開されるのは問題じゃないの?」という冷静な声も上がっています。

 中には、「本人に無断でLINEの画面写真を入手するのは違法じゃないの?」「個人情報保護法に違反するのでは?」「プライバシー侵害や名誉毀損にならないの?」という疑問も目にします。今回は、これについて解説したいと思います。

1.無断でパスワードロックを破った場合、
不正アクセス禁止法にあたる

 まず、出版社がLINEの画面写真をどのように手に入れたのかは分かりませんが、おそらくタレント本人が自主的に提供したということはないでしょう。そうすると、出版社はタレント本人に無断で画面写真を手に入れた可能性がありそうですが、この点は問題にならないのでしょうか。

 これについて、不正アクセス禁止法は、「パソコンやスマホなどから、他人のIDやパスワードを無断で入力して認証し、インターネット上のパスワードロックされている機能を使える状態にすること」などを禁止しています。他人のSNSのアカウントに、無断でパスワードを入力してログインした場合も、不正アクセス行為にあたり、罰則が科される可能性があります。

 今回の件で、仮に、タレントの身近な人が本人に無断でパスワードを入力してLINEにログインしたということがあったのであれば、その人が不正アクセス禁止法に違反する可能性があります。

 さらにもし、報道記者がその誰かに「パスワードをこっそり入力して、画面写真を撮影してきてくれ」などと指示していたということがあれば、そのような指示をした報道記者に対しても不正アクセス禁止法違反が成立する可能性があります。

 もっとも、不正アクセス禁止法は、基本的に「不正アクセス行為」を規制する法律です。

 誰かがパスワードロックされていない状態の画面を偶然見てしまい、その場で写真に撮ったような場合は、「不正アクセス行為」があったとはいえず、不正アクセス禁止法違反にはあたらないでしょう。

 また、記者としても、情報提供者からSNSの画面写真の提供を受けただけであり、積極的に不正アクセスを指示したわけではない場合には、「誰かを使って不正アクセス行為をさせた」わけではないので、記者に不正アクセス禁止法違反は成立しないと思われます。


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