[ベトナム・カンボジア・ラオス・タイ]
(2014.10.25-12.29 65days 総費用18万円)
黄昏のホイアン、美少女を追い求めて全力疾走
(承前)11月8日 すでに陽は沈み暮れなずむホイアン旧市街。手持ちの「地球の歩き方」で劇場の場所は事前にチェックしていたので、とにかく全力疾走。少女を追いかけ夕暮れの街を走るとは青春映画の定番のシーンである。しかし悲しいかな日頃の運動不足が祟って息切れしてくる。とにかく10分ほど走ってくだんの住所に到着したが暗く閑散としている。よく見ると古い建物の壁に劇場が最近引っ越したという趣旨の貼り紙が。
慌てて引っ越し先を地図で確認するとホイアン川に近いレストラン街である。自分を叱咤して数百メートルをさらに走る。劇場に到着するとやはり暗く人気がない。案内板をよく見ると今夜は休演日で次の上演は明日夕刻である。嗚呼無情! 万策尽きたと愕然とする。
それでもユニーの純真な瞳を思い出すと彼女に申し訳なくもあり、あきらめ切れず半時ほど彼女の影を追い求めて旧市街を速足で歩く。あいにく夕食時で街路は観光客で賑わっており見通しが利かない。もしかしたら、ユニーが諦めてホステルに戻るかもれしないと淡い期待を抱いて7時半過ぎに悄然とホステルに戻る。
酒と女とカースト制度
受付のボーイが心配して声をかけてきて、ユニーはまだ戻ってないと告げた。何か食べながらビールでも飲んでユニーの帰りを待つことにした。近くの雑貨屋でビール2本とポテトチップスを買ってロビーでチビチビやりだした。すでにポーカー賭博は終わっておりインド人青年が一人いるだけである。彼によると小悪魔ウェンディーは酔っ払ってしまったのでリディアがベッドで寝かしつけていると。青年は「ギャルにビールは禁物だぜ(Girls never go well with beer)」と断言。青年は大柄で自信に満ちた風貌をしており、少しプレイボーイ的な雰囲気も併せ持っていた。
青年はインド北部の由緒ある大地主の御曹司であった。村で一番の金持ちで大きなリンゴ農園などを所有している。なかなかの反骨精神の持ち主で客観的な批評眼を持っているようだ。「いずれは家督(family business)を継ぐことになるかもしれないが、それまでは自由に世界を見てみたいし、地域の経済に貢献できるような新しいビジネスを探したいんだ」と意外な内面を見せる。彼のガールフレンドのリディアと二人だけで話した時にリディアが「彼は外見に似合わずナイーブな性格なの。いつも何か悩んでいてお酒を飲みすぎたり、マリファナを吸ったりするの。だから煙草も止められないし・・・。私との付き合いもずるずると結論を先延ばしで・・・」と打ち明け話をしたのを思い出した。
インド青年もビールと鳥の唐揚げのような料理を買ってきて私に勧めた。彼とビールを飲みながらおしゃべりして腰を落ち着けてユニーの帰りを待つことにした。インド経済はマクロ的には順調で政府の経済運営の方向性は間違っていないと青年は評価。他方で貧富の格差、地域格差は経済成長に伴い広がる一方で深刻化していると指摘した。私は「それならカースト制度という前近代的な身分制度をなぜ政府は廃止できないのか」と質したところ思いがけない説明があった。