美少女ユニーは見知らぬ夜の街を彷徨い歩いて
話が重くなってきたころ、4本目のビールを飲み終えた。ちょうどそのときユニーがホステルに戻ってきた。時計は9時半近い。ユニーは泣きそうな顔で「やっと会えてよかった。夕食を食べてからホステルに戻ろうとしたけど道に迷って帰り道が分からなくなって」と迷子の子供のようだ。どうやら一時間半くらいホステルを探して悪戦苦闘していたようだ。
インド人青年はユニーに向かって言った「君はジュリエットのようだ。運命の悪戯でロミオと行き違いになって」そして私に言った「オールド・ロミオよ。二度と彼女を離してはいけない」それから上機嫌で青年は部屋に引き上げた。ユニーは私に向かって「二度と一人で出かけないで。今日は本当に寂しくて悲しくて・・・」と口ごもった。
私はゆっくりとウェンディーが酔っ払って勘違いしたのだと行き違いの原因を説明した。そして「明日は9時にロビーで待っているよ。絶対に君が来るまでどこにも行かずに待っているから」と約束した。
“ジュリエット”誕生
11月9日 昨夕の轍を踏まぬよう約束の時間より早めに8時45分からロビーでお茶を飲みながらユニーを待っていた。彼女は9時ちょうどに2階から降りてきた。昨日朝食を食べた屋台が清潔で対応が良かったので、その屋台へゆくことにした。すでに日差しがかなり強いが彼女は朝シャンして髪が濡れているので帽子を被らない。そこで私は日傘代わりにデイパックに常備している雨傘を出して彼女に差し掛けた。ジュリエットは感激した面持ちで「Taka, you are so sweet. Thank you very much」と礼を言った。
屋台は現地の人たちの朝食が終わる時間帯で空いていた。私はホイアン名物のチャーシュー入りで濃い味付けの太麺“カオ・ラウ”、彼女はポピュラーなレア牛肉入りのフォー・ボー・タイを注文。落ち着いたところでお互いに呼び名をどうするか相談した。私の呼び名はニックネームの「タカ」でお互い違和感がないが、彼女の呼び名は難しい。それまでは姓であるキムを韓国式の正式な呼称である“キムッシ”と呼んだり、両親が彼女を呼ぶときの幼名である“ユニー”と呼んでいたが、“キムッシ”は堅苦しいし、“ユニー”と私が呼ぶと彼女は親から呼ばれているようで違和感があるという。私は昨夜の一件から「ジュリエットにしよう」と提案したら彼女は恥ずかしそうに「Yes, please」と頷いた。
⇒第7回に続く
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