補償実現せぬまま高齢化する元従軍慰安婦ら
フィリピン人元従軍慰安婦に対する補償問題は、名乗りを上げた元慰安婦46人が1993年、日本政府を相手取って総額9億2千万円の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こしたことに始まる。しかしその10年後の2003年末に最高裁で敗訴が確定しており、司法による救済の道は閉ざされている。このため、立法措置による救済の道が比国内で模索され、アキノ大統領も就任直後はその可能性に言及していたが、それから5年以上が経過した現在も実現には至っていない。
元慰安婦を支援する民間団体「リラ・ピリピナ」のエクストレ・マドゥーラ代表(63)は、元慰安婦の日韓合意を引き合いに出し「日本政府は韓国政府の意向を受け入れた。フィリピンの慰安婦問題も同様に取り組まれるべきで、日本政府はもはや何の言い逃れもできない」と力説した。
この日の抗議集会は1時間以上続き、暑さと疲労のために途中で座り込んでしまう元慰安婦女性もいた。
リラ・ピリピナが設立された1992年当時、所属していた元慰安婦は174人。しかし老衰でこれまでに104人が他界し、現在は70人と半分以下になった。毎年の終戦記念日に合わせて開かれる抗議集会も、高齢化のために参加者が減り続けているのが現状だ。
終戦から70年が経ち、今年は日比国交正常化から60年という節目の年。日韓合意問題という引き金に加え、天皇、皇后両陛下の訪比という条件が揃ったこのタイミングを逃してしまったら、残された70人が日の目を見ることはないかもしれない。天皇訪比で日比の友好親善が深まる一方、元慰安婦問題は今後も両国に影を落とし続ける。
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