天皇、皇后両陛下がフィリピンに到着された翌1月27日の主要英字紙は、両陛下が専用機から降りてアキノ大統領と対面する写真が一面に掲載され、「比日関係がさらに強固に」「日本の天皇が到着直後におじぎされる」などの見出しが躍った。日本の歴代首相訪比も含め、日比関係にまつわるニュースが大々的に取り上げられることがほとんどなかった過去の報道を鑑みると、今回の訪比への注目の高さがうかがえた。
先月26日、フィリピンの空港に到着された天皇、皇后両陛下(Getty Images)
マラカニアン宮殿で開かれた晩餐会に天皇が出席された翌28日、質の高い報道で知られる英字紙インクワイアラーは「南シナ海で緊張が高まる中、紛争勃発を阻止する方法として、日本の天皇は第二次世界大戦の記憶を心にとどめるよう比日の若い世代に呼び掛けられた」と伝えた。比中などが領有権を争う南シナ海南沙諸島で、実効支配を拡大する中国を強く意識する文脈を使った。
天皇による訪比は54年ぶり。最初の訪問は1962年で、フィリピン人約110万人、旧日本兵約51万8千人が戦死した太平洋戦争終結から17年後のことだった。
比国内では当時、まだ反日感情が強かった。皇太子夫妻は最高学府、フィリピン大学を訪問され、笑顔の学生たちに囲まれている写真が日本の報道記録に残っている。保守的な英字紙、ブレティンによると、その裏で実は一部の学生たちがデモを計画していた。この動きに気付いた副学長は「皇太子夫妻は戦争とは(直接的に)関係ないのだから、迎え入れよう」と説得し、計画を断念させたという。