好きという感情はなかった
だからといって結婚したいとか、付き合いたいと思ったわけではない。
しかし彼は根気強く、彼女を誘い続けてくれて、毎週末には彼女の近くまでわざわざ会いに来てくれた。
「デートを続ける気持ちになったのは、毎回夫に嫌だと思うところがなかったからですね。積極的に『また会いたい』と思ったことはないですが、『これで会えなくなっても、いいの?』と毎回、自分に問いかけたときに、『会えないのは嫌かもしれない』と思ったので、次のデートをOKしました。それを繰り返していくうちに、自然に好きという感情が芽生えていた……というより、気がついたら彼を好きになっていたという感じです。だから結婚を『決めた』という意識は、最後までなかったですね。お見合いをして、デートをして、『断るか、続けるか』の選択をして行った先に結婚があった感じです」
付き合った男性は2人
それまでの恋愛と比べて、なにが違っていたのだろうか?
「そうですね、今までの恋愛では『これを言ったらどう思われるか』とか、『嫌われるんじゃないか』と考えて、気を遣うことが多かったのですが、夫に関してはそういうところがまったくないんですよね。どんな自分でも、『必ず受け入れてくれる』という安心感があるんです」
「好かれている」という実感が、安心感を生むという。
「今までの恋愛では、私が好きになったときには、相手は既に私に興味を失っていたので、安心したことはありませんでした」
付き合った男性は2人。
「ひとりは29歳から2年くらいで、途中で別れたり、また会ったりを繰り返しました。なので、付き合っていたとは言えないかもしれません。相手は結婚している人でした……。次は、32歳くらいのときに、半年くらい付き合ったかな。アメリカ人で、とっととアメリカに帰っていってしまいました。あとは、自分から告白してふられたことが2回ぐらいありましたね」
“好かれている”安心感
その後32歳から50歳になるまで一人で来た。いや、それまでも本当はずっと一人だったのかもしれない。
「夫と会うようになってから、ひとつきくらいしたころでしょうか、彼が手を繋いでくれて……そのとき、とても嬉しく感じたんですよね。直接言われたわけではないけれど『守られている』と感じました」
嬉しそうに話す彼女に、「結婚して、よかったことはなんですか?」と聞くと、「ストレスが20分の1に減りました」と答えた。
旦那様は、彼女のすることをなんでも「楽しんでくれる」という。
「たとえば私はご飯にたくさん、ふりかけをかけるんですが、そういうのも面白いねって、彼はいちいち笑ってくれるんです。それまでは誰にも見せなかった自分を彼に対しては、素直に見せていると思います。……というよりも、彼の前だと自分が自然と、素直になれているんです」