勝利に自信深めるロシア
トルコがアレッポ住民の越境を拒んでいるのは既に国内に250万人ものシリア難民を抱えてその受け入れが限界に達しているという国内事情がある。加えて「欧州へ難民が殺到しているのは、トルコが国境管理をきちんとしていないからだ」という欧州連合(EU)の批判に対して意地になっているからだ。
しかしトルコだけではなく、ヨルダン、レバノンなど周辺諸国が難民の受け容れに悲鳴を上げているのも事実。140万人の難民がいるヨルダンのアブドラ国王は最近「難民を受け入れている国民の感情は爆発寸前。このままでは他の方法も取らざるを得ない」と難民の追放さえ仄めかしている。
反体制派の最大の支援国であるサウジアラビアもアレッポの戦況には苦悩の色が濃い。サウジの軍スポークスマンはこのほど、シリアに地上部隊を派遣する用意があると述べたが、これに対してイランの革命防衛隊司令官は「サウジにそうした勇気があるはずがない」と足下を見ている。
戦況が政府軍優位に一変したことに自信を深めているのがロシアのプーチン大統領だ。プーチン大統領が自信と余裕を見せているのは、軍事面だけではなく、外交的に勝利したと考えているからに他ならない。ロシアの軍事介入で政府側が反体制側から奪還した領土はわずか2%しかない。
しかし、その軍事的な優勢を背景に獲得した外交的勝利は計り知れない。その最たるものはアサド大統領の退陣を前提にした内戦終結のシナリオを事実上無効にしたことだ。先月末に開催されたシリア和平協議はわずか1週間で中断に追い込まれたが、反体制派は別にして米国も含め「アサド早期退陣」の主張は姿を消した。
こうした中、本来、世界の紛争解決に最も影響力を行使しなければならない米国は指導力を発揮しようとしていない。優柔不断なオバマ大統領は今回のアレッポ住民の人道危機にも積極的に動く気配は見せていない。米国の指導力回復は新大統領の誕生まで待たなければならないのは確実だ。
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