オバマ米大統領は隠れイスラム教徒、しかもシーア派――。
サウジアラビアとイランが断交し、政治的、宗派的な分断が深まる中東で、こんな“陰謀説”がネット上などで駆け巡り、話題になっている。発信源がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国の治安長官とあって、取るに足らないジョークとは片付けられないようだ。
シーア派ルーツ
米有力紙ワシントン・ポストなどによると、ネットのツイッターでこのほどメッセージを発信したのは、ドバイ首長国のダヒ・カルファン・タミム治安長官(元警察長官)。単なる民間人ではなく、歴とした有力者で、そのツイッターには120万人の読者がいる、という。
同長官はオバマ大統領の“シーア派のルーツ”が米国とイランの接近と和解の動きの一助となったとし、大統領が間もなく、イランにあるシーア派の聖地を訪問するのではないか、とツイートした。真偽はともかく、オバマ氏のイスラム教徒説は中東でもかなり面白いことから、多数に繰り返し読まれている。
この“陰謀説”は今に始まったことではない。2008年の米大統領選挙の際にも、オバマ氏の隠れイスラム教徒説が囁かれ、シーア派の盟主であるイランの国営各紙も同氏がシーア派教徒であることを仄めかした。米誌タイムによると、大統領に当選した時には、「今や、ホワイトハウスに兄弟がいる」などとイラクのシーア派地区で祝福の声が多数上がった、という。
オバマ氏のイスラム教徒説にはそれなりの理由がないわけではない。同氏のフルネームはケニア人の実父の名前にちなみ、「バラク・フセイン・オバマ」。「父親は無神論者に近かった」(オバマ氏の自伝)ものの、イスラム教徒だった。白人の母親の再婚相手であるインドネシア人もイスラム教徒で、父親が2人ともイスラム教徒であったことが陰謀説の元になっている。
オバマ氏自身が小学校の4年間はインドネシアで、イスラム教徒が多い学校に通っていたことも、陰謀説を補強する材料だ。同紙によると、2014年の米国の世論調査では、共和党の54%が「オバマ氏は本当はイスラム教徒だ」と思っていることが分かった。
イスラム法は「父親がイスラム教徒の場合は自動的に同教徒になる」と定めているが、実際にはオバマ氏はプロテスタントのキリスト教徒だ。同氏のミドル・ネーム「フセイン」というのは、崇拝されるシーア派殉教者の名前で、シーア派教徒には人気のある氏名だが、スンニ派教徒にもポピュラーだ。