シリアの内戦終結に向けた和平協議が29日からジュネーブで始まる。協議の成否は過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅に直結するが、いまだ会議の参加者が最終的に決まっていない上、アサド政権や反体制派を支援する各国の思惑が交錯、駆け引きが激化しており、前途は視界不良そのものだ。
驚くのは協議のやり方
今回は2年ぶり3回目の協議だ。当事者の一方のアサド政権代表団(代表、シリア国連大使)はすでにジュネーブ入りしたが、もう一方の当事者の反体制派代表団「高級交渉委員会」はその代表メンバーが確定せず、現地に到着していない。調停役の国連のデミストラ特別代表は、開始日に全員がそろう必要がないとしており、見切り発車する見通し。
反体制派の代表団の構成については、ISと国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」の両組織を排除することで関係者が一致しているものの、その他の参加者については、反体制派のスポンサーであるサウジアラビアやトルコ、アサド政権を後押しするロシアなどの意見が対立、合意に至っていない。
サウジは協議に先立って先月、リヤドに自らが支援する反体制各派を集め、「高級交渉委員会」を発足させた。しかしロシアはこの委員会の中に、テロ・グループと見なすイスラム主義者組織の「ジャイシュ・イスラム」が含まれているとして反対、サウジとの間で調整が付いていない。
またロシアは反体制派の中に、シリアのクルド人勢力、民主連合党(PYD)を含めるよう要求、これに今度はトルコが反発。もしPYDが代表団に入るようなら、トルコは和平協議から手を引く、ともめている。
こうした中、米国は主導権を発揮できないでいる。当初はシリア新政府発足に至る「移行政権」から、アサド大統領を断固排除すると主張していたが、当面はアサド氏が残留するのもやむなしという現実路線に転換、来年3月までは続投を容認する考えに傾いている。これにサウジや反体制派が話が違うと猛反発するなど協議を支える各国の思惑や政治的狙いが交錯している。
驚くのは協議のやり方だ。国連のデミストラ特別代表は、アサド政権側と反体制派代表がいま直接協議を行えば、単に罵り合いで終わりかねいないとして、同じ交渉のテーブルには着かせず、それぞれジュネーブの国連代表部やホテルに陣取らせ、特別代表自身やそのスタッフが両陣営を回って相手側の主張を伝えて間接的に協議を行う“御用聞き”方式で進める方針。