2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2016年1月29日

 協議期間は半年を見込んでいる。国連安保理は半年以内に「移行政権」を発足させ、1年半以内に自由選挙を実施することを決議しており、協議期間はこの日程に合わせた形になっている。しかし、いくら意見が対立しているといっても、この“御用聞き”方式では、うまくいかないのは目に見えているとの声が強い。

シリア政府軍とISが攻勢

 アサド政権やロシアが協議に強気な姿勢を見せているのは、ロシア軍の反体制派への空爆効果で政府軍が反体制派に占領されていた北西部や南部の領土を次々に奪い返すなど戦況が優位に傾いているからに他ならない。北部ではこの数週間で30に上る村落から反体制派が一掃された。

 南部でもつい最近、政府軍がヨルダンとの国境に近い交通の要衝、シェイク・ミスキーンを反体制派から奪い返した。この町は2014年初頭から反体制派「自由シリア軍」に占領されていた。シェイク・ミスキーンは反体制派にとっては、ヨルダンからの武器・弾薬の補給ルートの戦略的要所で、深刻な打撃となった。

 戦況に変化があるのは、これだけではない。シリアとイラク各地で劣勢が伝えられているISが1週間ほど前から東部の油田地帯の中心都市、デイル・ゾウルの包囲網を強化し、自爆攻撃などで猛攻を加えている。同市は東部で政府軍が守るほとんど唯一の都市だ。

 同市の20万人に上る住民は食料や医薬品不足から危機的な状況に陥っているが、アサド政権が首都ダマスカスから約450キロ離れた同地に援軍を送る可能性はなく、このままでは陥落は必至と見られている。ロシア軍は北西部の反体制派への攻撃に集中しており、デイル・ゾウルを包囲するIS空爆は積極的に行っていないようだ。

 シリア専門家の1人は「ISが同市を占領すれば、劣勢で意気消沈していた戦闘員の士気が再び高まるだろう」としており、よたよたとスタートする和平協議を尻目に、ISのしぶとさが再びクローズアップされることになりそうだ。

  
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