中東の真骨頂
今回のオバマ氏の隠れイスラム教徒説は、イランの核協議の合意で急接近する米国とイランの政治状況に合わせて広がり、オバマ政権のイラン重視に不快感を隠さないスンニ派のサウジなど湾岸諸国に受けているようだ。サウジとイランが断交し、ペルシャ湾を中心に政治的な対立が激化していることも背景にあるだろう。
オバマ氏がイスラム教徒であることを示唆する具体的な証拠は一切なく、「たまにするうわさや発言が飛び交う中東の真骨頂」(ベイルート筋)と言えそう。昨年には、ヒラリー・クリントン元国務長官が過激派組織「イスラム国」(IS)を操作するため、イスラム原理主義組織「モスレム同胞団」を使うことを討議しているという偽画像も中東で出回ったこともあった。
こうした中、サウジのイスラムの最高権威であるアブドルアジズ・アルシェイク師がこのほどオバマ氏の“隠れイスラム教徒説”を凌ぐような話題を提供した。チェスが「アルコールやギャンブルと同じ悪魔の所業」として、チェス禁止のファトワ(宗教令)を出したのだ。
同師がサウジのテレビ番組での質問に答えたもので、チェスが時間と金の無駄であり、プレーヤー同士の対立を生んでいる、と決め付けた。チェスは中東では人気のゲーム。サウジでも年間70回程度の大会があるとされており、同国のチェス愛好者は困惑を隠し切れないでいる。
オバマ氏の“隠れイスラム教徒説”にせよ、サウジのチェス禁止令にしろ、さすが「なんでもありの中東」(同)といったところか。
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