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2016年2月19日

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倉都康行 (くらつ・やすゆき)

RPテック代表取締役・ 国際資本システム研究所長

1979年東京大学経済学部卒。東京銀行、バンカース・トラストを経て、チェース・マンハッタン銀行。2001年に金融シンクタンクのRPテック株式会社を設立。近著に『危機の資本システム』(岩波書店)。
 

 確かに中国経済への不信感の種はいくらでも挙げられる。実体経済においては、輸出の減少や供給過剰感から来るデフレや失業増のリスク、国有企業の非効率経営が続く構造改革遅延のリスク、民間企業や地方自治体が抱える巨額の債務リスク、銀行の巨額不良債権リスクなどが懸念されており、市場面では、株価や人民元の急落リスクに加えて資本流出リスクが警戒材料になっている。

加速し始めた資本流出
2015年は6000億ドル以上

 中でもいま市場で話題になっているのが、昨年来加速し始めた中国からの資本流出ペースである。2015年通年では6000億ドル以上(約68兆円)の資本が中国から海外に流出し、外貨準備高は2014年6月のピークから約6500億ドル減少した。 

 その主因は、①人民銀行による人民元買い・ドル売りの為替介入、②海外投機マネーの中国脱出、③中国居住者に拠る海外投資、そして、④中国企業によるドル建て債務返済のためのドル資金手当てである。

 このうち、④については少し説明が必要かもしれない。中国の大手企業は2010年以降、米国の量的緩和から生まれた潤沢なドル資金を、ドル建て社債発行を通じて取り入れてきた。当時は人民元の先高観が強く、またドル金利が極めて低い水準にあったことで、ドル建て債務を積み上げるには絶好の時期であった。昨年秋以降、市場に殺到した中国企業によるドル買いは、そんな相場観が崩れてパニック的に起きた債務返済用のドル手当てであった。

 従って、資本流出にはむしろ中国企業の財務健全化という一面もある。またG20や全人代(=全国人民代表大会、今年は3月5日)を控えて、中国政府は徹底した人民元防衛に出動する意思を見せており、投機筋も当面は人民元売りを控えるかもしれない。それは、原油価格の底打ち期待とともに、世界の株式市場に安堵感をもたらす可能性もあろう。

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