2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2016年2月19日

 昨年6月の上海株急落と同8月の人民元切り下げは、それまで市場の水面下で囁かれていた中国経済のハードランディング説を、一気に表舞台に引っ張り出すことになった。中国政府による強引な株価対策は失敗に終わり、人民元下落ペースのコントロールも失って、「中国に危機対応力は無い」との印象を世界中の市場に植え付けてしまった。

 本年初からの株式市場の大波乱は、そんな中国市場への不安感を契機に生まれたものだが、同時発生的な原油価格の急落や、米国ジャンク債市場の暴落、中東や北朝鮮を巡る地政学リスク、米国利上げへの不透明感など様々なネガティブな材料が重なり、さらに2月に入ってからは欧州の大手金融機関に信用不安も生まれ、消化不良を起こした市場では投資心理が急速に冷え込んでしまったのである。

 実体経済の低迷感も鮮明となった。日本の昨年10-12月期のGDP実質成長率は前期比マイナス1.4%(年率)と失速、一強と見られた米国ですら0.7%(年率)と低空飛行の状況にある。ユーロ圏の成長率も前期比0.3%に止まり、新興国ではロシアやブラジルがマイナス成長に陥るなど、不振が顕著となっている。

中国経済の陽は昇るのか、落ちるのか(istock)

ジョージ・ソロス氏が断言
「中国のハードランディングは不可避」

 だが、そんな中でも中国の成長率が低下傾向から抜け出せそうにないことが、ひときわ世界の耳目を集めている。昨年10-12月期の同国成長率は前年同期比6.8%と2009年以来の低成長となり、通年でも6.9%と1990年以来のスローペースに落ち込んだ。今年の成長目標は6.5-7.0%というレンジでの設定になりそうだが、ほとんどの機関投資家は実際の成長率を4-5%程度と推測している。

 市場の一部には、そうした成長率の維持すら難しいと見る向きもある。著名な投資家であるジョージ・ソロス氏は先般のダボス会議で「中国のハードランディングは不可避」と発言するなど、中国経済への不信感は強まるばかりだ。投機筋は、人民元急落の可能性に賭けて、昨年秋から本金市場で強烈な勢いで人民元売りを仕掛けている。


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