過剰負債でも止めらなれない
過去最高ペースで増える新規融資
だが、同国企業の債務問題はドル建て債券だけの話では終わらない。国内融資や海外市場調達を含む総債務残高は、GDP比150%まで膨張しているからだ。これはバブル期の日本の水準を大きく上回っており、この民間債務の返済可能性こそが、中国経済の先行きを占う最大の注目点であると思われる。少し身震いするのは、過剰負債が明らかになっている今日においても、企業への新規融資が過去最高のペースで増え続けていることである。
中国の債務問題としては、これまで地方自治体が野放図に積み上げてきた財政赤字に焦点が当てられてきた。それは、08年の金融危機への対応策として中国政府が発動した巨額の財政投資に端を発したものであり、地方自治体が進める不動産開発プロジェクトには銀行も積極的に融資を行っていた。それが過剰投資を生んで、銀行の不良債権を急増させているのは公然の秘密である。
そして過去数年間に、内外の金融緩和基調の中で今度は民間企業が借り入れを急増させてしまった。ある香港の調査会社に拠れば、同国銀行の資産規模は7年前から3倍以上に急拡大している、という。その多くが銀行の不良債権と化していることは想像に難くない。中国の主要銀行は不良債権比率を1%台と発表しているが、それは国家統計局公表のGDP以上に怪しい統計である。
ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は6-8%程度と推計、英国市場では10%前後というリサーチが流布している。香港市場には、年末までには20%近辺にまで悪化する、との悲観的な予想すらある。
だが中国政府に、1990年代の日本が行ったような不良債権の大胆な処理を行って、デフレ経済を許容する考えはないだろう。経済の急収縮における失業増は、共産党の一党支配基盤を揺さぶりかねないからだ。世界各国も、むしろ問題先送りに拠るソフト・ランディングを期待しているのである。市場も疑心暗鬼ながら、その可能性に賭けている。
だが、中国が不良債権問題をこのまま隠し通せるのかどうか、誰にも確答は無いだろう。当の習主席自身すら解っていないかもしれない。中国のハードランディング確率は、コインを投げて裏表を占うようなものだ。今年の日本を含む世界経済は、そんな不安定な状況での運航を余儀なくされているのである。
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