2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月24日

 オバマは「米国民を守り、テロ・ネットワークを追及するのが第一優先順位」と言い、その後、これらのネットワークは米の「存立への脅威」にあらずと言っている。これはわかりにくい。ヒラリーはこれを繰り返している。

 共和党は必要な犠牲に触れず、完全勝利を約束している。トランプはISを徹底「爆撃」すると言い、ルビオは世界最強の軍はISを破壊すると言っている。

 次期大統領はテロリストの敵との拡大する戦争を引き継ぐことになる。この戦いをどう進めるのかの議論はまだ始まってもいない。

出典:David Ignatius,‘The ugly truth: Defeating the Islamic State will take decades’(Washington Post, January 18, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/defeating-the-islamic-state-will-take-a-long-war/2016/01/18/3be552a0-be05-11e5-9443-7074c3645405_story.html

*   *   *

IS打倒は2~3年でできる?

 この論説で、イグネイシャスはISを敗北させるには何十年もかかることを指摘しています。こんな長い戦争に米国民は耐えられませんから、これは米国民の対IS戦争への意欲を削ぐ結果をもたらす意見です。しかし、ISの敗北、それに対する勝利をどう定義するかにもよりますが、この指摘は大げさです。

 ISはカリフ制の国家であると言っていますが、それをそうでなくすることがISの敗北と考えられます。そしてそれはさほど難しい事ではありません。支配領域を持たない国家はなく、ラマディに加え、ファルージャ、モスル、「首都」ラッカを制圧してしまえば、「イスラム国」という国家はなくなったと言えます。これは米軍が出かけても、仏軍が出かけても、地元の軍と協力して、2~3年もあれば、できることです。

 能力の問題と言うより、やる気の問題でしょう。ISはそこまでの脅威ではない(オバマの「ISは米国の存立への脅威ではない」との発言など)として、やることをやっていないから、戦争が長引いているのです。ISの軍事力は旧フセイン政権の軍人の協力を得て、それなりに強いですが、それでも先進国の軍には蹴散らされるでしょう。

 スンニ派のきちんとした軍を作るのに、一世代かかるという話と、ISを敗北させる話は別の話です。ISの残党がテロ・ネットワークとしてIS打倒後も長く存続することも別の話です。またISとの戦いを、ペトレイアスがイラクで行った増派の際の反乱鎮圧作戦と同じように考えることは間違いです。ISはアルカイダのようなネットワーク型テロ組織ではなく、「国家」であると称しています。米空軍の退役将軍デプルータも言っていますが、空爆の強度を強めれば、ISを解体できるでしょう。

▼おすすめの電子書籍

ISに翻弄される世界
中西輝政/保坂修司/マイケル・シン/佐伯啓思

▼ご購入はこちら
Kindleストア
iBooks
楽天kobo
Kinoppy(紀伊國屋書店)
BookLive!

 

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る