日本国内で、今回の中南米での流行後では初めてとなるジカ熱輸入感染例が出た。川崎市に住む、ブラジル帰りのティーンエイジャーだ。流行地への渡航歴に加え、発熱と発疹の症状があったため検査の対象となったようであるが、容体は安定しており自宅療養しているという。
報道はやや過熱気味だが、蚊の季節でもない今、輸入感染例が出たからと言って国内で流行が広がる可能性はゼロだろう。アメリカでは2015年1月1日から2016年2月17日までの今シーズン、すでに82例の輸入感染例が報告されているが、アメリカ国内で蚊を通じて感染した症例数は無い。
そもそもジカ熱は、風邪に似た症状の軽いウイルス感染症と考えられ、あまり注目されていなかった。昨年秋ごろから、中南米を中心とする流行地で、感染した妊婦から生まれた子供に小頭症となる症例が相次いだことから、今年2月2日、WHO(世界保健機関)がジカ熱の流行に対し「緊急事態宣言」を出した。
しかし、ヒトスジシマカによって媒介されるジカ熱は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」いわゆる感染症法における第4類感染症。感染症法においてもっとも危険度の高い第1類感染症には、一昨年西アフリカで大流行したエボラ出血熱などが入るが、第4類感染症は「人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物などの物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれのある感染症」にすぎない。第4類にはマラリアなど40を超える感染症が指定されており、普段は感染例が出ても報道されることは少ない。
性交渉経由の方が感染力が強い?
一方、ジカウイルスは当初思われていたよりも、性交渉による感染力が強いとの見方も出ている。英BBCの報道によれば、アメリカでは妊婦を含む、性交渉による感染が疑われる14例の報告があり、調査をすすめているという。
注意したいのは、ジカ熱に感染した妊婦から生まれた子供全員が小頭症となるわけではないことだ。血液検査でジカ熱陽性であっても、羊水に感染が見られなければ子供に影響はないという見方もある。また男性から女性に感染した症例はあるが、女性から感染した症例は確認されていない。