バイアグラは副作用から生まれた
たとえば、勃起不全治療薬として有名な「バイアグラ」は、「当初、副作用として見いだされた作用を主作用として応用するようになった医薬品」として例示される。
この薬の一般名はクエン酸シルデナフィルで、もともと狭心症の治療薬として開発された。ところが、開発中に勃起を惹き起こす副作用が判明し、新薬誕生とあいなった。なお、バイアグラという商品名は、vigar(精力)とNiagara(ナイアガラ瀑布)を合成したものという。
いまや男性の救世主と称えられるようなバイアグラだが、この薬を狭心症の発作時に用いられるニトログリセリンや亜硝酸アミルと同時に服用してはいけない。動脈が拡張しすぎて血圧が急降下し、命にかかわるおそれがあるためで、「いわば本来期待されていた作用の方が副作用となってしまったわけである」。
古今東西の実例を「へえ!」「ほお」「そうだったのか!」と驚きながら紐解いていけば、毒と薬は不可分であるという著者の「毒薬同源」の思想が、すとんと腑に落ちるはずである。
清原和博元野球選手の覚醒剤事件やテニスのマリア・シャラポワ選手のドーピング違反など、昨今の話題に関連して読んでも、ためになる。あるいは、毒と薬がいかに世界を動かし、歴史を変えてきたか、という歴史家の視点で読んでも楽しめよう。
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