蒔絵師・柴田是真〔ぜしん〕といっても、その名をご存じない人が多いかもしれない。江戸時代の画家・伊藤若冲〔じゃくちゅう〕や河鍋暁斎〔かわなべきょうさい〕がそうであったように、是真の芸術は日本よりも欧米で高く評価され、多くの作品が海外に所蔵されているのだ。
柴田是真は文化4(1807)年、江戸両国で生まれた。11歳の時、名工・古満寛哉〔こまかんさい〕に弟子入りして蒔絵技法を習うが、蒔絵には下絵を描く画技が不可欠であると気づき、16歳で四条派の画家・鈴木南嶺〔なんれい〕に入門して画も学ぶ。やがて、漆工にも絵画にも才能を発揮した是真は、和紙に色漆を用いて絵を描く「漆絵」を発展させ、掛軸や画帖、屏風など多くの優れた作品を発表する。江戸っ子好みの機知に富んだデザインは、当時、絶大な人気を博していたという。
The Catherine and Thomas Edson Collection, courtesy of San Antonio Museum of Art
一方、明治6(1873)年にウィーン万国博覧会で「進歩賞牌」を受賞して以来、是真の名は海外でも一躍有名になる。今回の展覧会では、アメリカ・テキサス州在住のキャサリン&トーマス・エドソン夫妻が収集した是真の漆工と絵画約70点が初めて里帰り。日本に所蔵される博覧会受賞作等の優品約30点とともに、計100点の作品を通して是真芸術の真髄に迫る。
欧米人が愛した是真作品の魅力とは何か、この目で確かめてみたいものだ。
江戸の粋・明治の技──柴田是真の漆×絵
東京都中央区・三井記念美術館(東京メトロ銀座線三越前駅下車)
〈問〉03(5777)8600 ハローダイヤル
http://www.mitsui-museum.jp/index2.html
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