日米同盟が危うい。9月16日の政権発足以来、鳩山由紀夫政権が次々と示してきたのは、沖縄の米軍普天間飛行場返還が遠のく様子と、海上自衛隊によるインド洋での給油活動の来年1月の中止表明だ。「緊密で対等な日米関係」の構築をうたった衆議院選挙の政権公約(マニフェスト)に基づく政策だが、同盟の基盤にかかわる重大な事態だといえる。一連の対応を見ていると、鳩山首相は、「対等な日米関係」の意味を履き違えているのではないかと思う場面が多い。今後、骨太な外交・安全保障の基本方針について本腰を入れた議論を行い、国民の前に示すべきである。
「対等な日米関係」 その真の意味とは
まず、鳩山首相は日本の宰相として、日本の戦後史をもう少し勉強し、少なくとも二つの事実を正しく理解する必要があるだろう。第一に、「対等な日米関係」についてだ。首相は11月2日の衆院予算委員会で、次のように答弁した。
「私は(日米が)対等なパートナーになろうと言ってきた。対等なパートナーというのは、お互いに問題が起きた時に、まずはアメリカさんどうですか、という話ではなくて、日本としての思いを、たとえアメリカと違っていてもしっかりと訴え、その中で結論を見出していけるような関係だ」
これが首相が標榜する「日米基軸」の同盟国としての「対等なパートナー」像だという。米国はもとより、英国など他の米国の同盟国は、今の日本の現状なら首をかしげるだろう。「対等」な状態とは、通常は双方が応分の負担をし、そのうえで互いに主張もし合う、というのが国際社会の常識だからだ。
そもそも日本は、米国が保有する核兵器によって、第三国からの核攻撃を抑止する「核の傘」の庇護の下で守られてきた。その代わりに在日米軍基地が存在するともいえるが、日本の安全は米国抜きでは保障されてこなかったのは事実だ。
もっとわかりやすい例は、民主党も支持するミサイル防衛(MD)の配備と運用だ。主に北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に備える日本のMDは、米国の情報がなければ効果的な運用は困難だ。ミサイルの発射兆候や発射を確認するには、高い監視能力を持つ早期警戒衛星が必要だが、日本は現在これを持たず、米国に依存している。自前の早期警戒衛星は1基3000億円ともいわれる。
米国との「対等」な役割分担を目指すなら、防衛費は今よりはるかに巨費となる。自衛隊の国際平和協力活動では、さらに幅広い貢献が求められるだろう。
このように、日本の安全を今も米国に大きく依存する一方で、鳩山政権は、日米合意に基づく米軍再編を「見直しの方向で臨む」としている。そのまま「日本の思いをしっかり訴える」だけのつもりなら、同盟国としての信頼関係は大きく損なわれるだろう。
普天間移設問題で 沖縄のマグマが噴出
もう一点は、米軍再編の中でも、特に沖縄の米軍普天間飛行場移設問題への対応だ。