2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月14日

フランスでは右翼政党が躍進するおそれ

 同盟を負担に感じているのはアメリカ人だけではない。1年後にはフランスでも大統領選挙がある。国民戦線のルペンはNATOとEUからの離脱、企業の国有化、外国投資の制限を約束している。トランプと同様、彼女もロシアとの特別な関係を見据えている。ロシアの銀行が彼女の選挙資金を出している。決戦投票になれば、中道左派と中道右派が結束するとフランスの友人は言うが、選挙は奇妙で選挙民は気まぐれである。

 その頃までには、英国はドアの外に半分出ているかも知れない。もし、国民投票でEU離脱派が勝てば、何でもありの状況となる。他のEU諸国でも真似ごとの国民投票が行われるかも知れない。ハンガリー首相のオルバーンはイスタンブールあるいはモスクワとの戦略的関係を時に語ったりしている。

 欧州から解き放たれた英国は大西洋同盟からも漂流するかも知れない。EU離脱後の経済が苦しくなると、選挙民は労働党政権を選択するかも知れない。労働党の指導部は過激に反アメリカ的である。コービン党首は軽んじられているが、もし、大衆が変化を望むなら、彼が唯一の選択肢である。選挙は奇妙で選挙民は気まぐれである。

 そうなると、どうなるか? フランス抜きの単一市場はない。英国抜きのNATOはない。全員が残念に思うわけではない。トランプが言うように、何百万ドルの節約は長期的な利益よりも判り易い。しかし、西側の結束、核抑止力、常備軍による半世紀におよぶ政治的安定、また、共通の経済圏による繁栄と自由が当然視されてはならない。

出典:Anne Applebaum,‘Is this the end of the West as we know it?’(Washington Post, March 4, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/donald-trump-and-the-end-of-nato/2016/03/04/e8c4b9ca-e146-11e5-8d98-4b3d9215ade1_story.html

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