2024年11月25日(月)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年12月2日

 Kindred said he thought Mitsubishi was prepared to move quickly. But Kelleher, rolling his eyes, was skeptical. He had worked with other Japanese banks before and, in his experience, they had always lived up to their reputation as being slow, risk-averse, and deeply bureaucratic.(中略)
  Kelleher only scoffed, “This is a waste of time, they’re never going to do anything.” (p451)

 「キンドレッドは、三菱はすぐに動く準備をしていると思うと言った。しかし、ケレハーは両眼をギョロギョロしながら信じられない思いだった。以前にも日本のいくつかの銀行と仕事をしたことがあり、その経験から分かったのは、対応が遅くてリスクを嫌い、とても官僚的だという評判を、日本の銀行はいつも裏切らないということだ。(中略)
  ケレハーは『時間の無駄だ。三菱は何もしないに違いない』とあざけり笑うだけだった」

 出資交渉が大詰めを迎え、モルガン・スタンレーのジョン・マックCEOが三菱UFJ側と電話での交渉に臨む準備をしている時に、ポールソン財務長官から電話がかかってきた場面では、財務長官自身も日本人に対する根強い不信感を持っていたことが分かる。

 Just as they were going over the details, however, Paulson called.
  “John, you have to do something,” Paulson said sternly.
  “What do you mean I have to do something?” Mack asked, his voice rising with impatience, explaining that he had just learned that the Japanese were inclined to do the deal. “You've been so supportive, you said we can get through this.”
  “I know,” Paulson said, “but you’ve got to find a partner.”
  “I have the Japanese! Mitsubishi is going to come in,” he repeated, as if Paulson hadn’t heard him the first time around.
  “Come on. You and I know the Japanese. They’re not going to do that. They’ll never move that quickly,” Paulson said, suggesting that he focus more on the deal with the Chinese or JP Morgan. (p474)

 「ちょうどマックたちが詳細を詰めていた時、しかし、ポールソンから電話がきた。
  『ジョン、何かやるべきだ』ポールソンは威厳をつけて言った。
  『何かしろとはどういう意味だ?』マックは聞き返した。いらいらして声がうわずった。日本の銀行が取引に応じる意向であることが、たった今分かったことを説明した。
  『あなたも支持してくれていたし、この線で行けると言ってくれましたよね』
  『そうだが、しかし、だれか出資してくるところを探すべきだ』
  『日本の銀行が応じてくれるんですよ。三菱がやってくれるんです』マックは繰り返した。ポールソンが最初から話を聞いていなかったかのように。
  『おいおい、君も私も日本人のことを分かっている。日本人はそんなことはしない。そんなに早く、動くわけがない』ポールソンはそう言い、中国やJPモルガンとの取引の方に重きを置いた方がいいと、それとなく言った」

金融機関トップと政府高官のドタバタ劇

 いよいよ、両社が電話でトップ会談をしている最中にも、再三にわたりマックのもとにポールソン財務長官らから電話が入ってくる。そのドタバタぶりにあ然とするとともに、さすがに交渉の重要な最終局だっただけに、財務長官の電話を後回しにして三菱UFJとの協議を続けるさまも興味深い。


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