日本唯一のアナログレコードメーカー、東洋化成(横浜市)は技術者の数をここ数年で2倍に。それでも「需要に対して供給が追い付かない」(同社の荻原氏)と嬉しい悲鳴を上げる。
「サービスを始めてから2000件ほど依頼が来ている」と話すのは、アーティストが自己資金なくしてアナログレコードを制作・販売できるプラットフォーム、QRATESを手掛けるトウキョウ・デジタルミュージック・シンジケイツ(渋谷区)の代表取締役のBae氏。
昨年末にユニバーサル ミュージック合同会社と共同でアナログレコードプレイヤー、「SIBRECO」を発売したamadana(渋谷区)の代表取締役社長、熊本氏は「今回発売したプレイヤーはシニア世代から若者まで、幅広い層に買われている」と自信を見せる。
ただ、ここで疑問が残る。「ハイレゾ」や「サブスクリプション型音楽配信」など、音楽のデジタル化が波及する現代において、なぜそれと対極に位置する アナログレコードが人気を博しているのだろうか。
アナログレコードを再び表舞台へと立たせたもの
近年世界ではCDの売り上げ落ち込みが著しい。その陰で、順調に売り上げを伸ばしてきたのがアナログレコードである。
ドイツの統計調査会社「Statista」によると、世界市場におけるアナログレコード売り上げ額は2006年に3400万ドルで底を打ち、その後徐々に回復。11年には1億ドルの大台を突破し、14年には3億4700万ドルに達し、底打ちとなった06年から8年間で10倍以上も売り上げ額を伸ばしている。
このアナログレコード復活劇の呼び水となったのが米国で08年に始まった「レコード・ストア・デイ」であるとされる。
米国では日本よりもCDの売り上げ低減が著しい。全米レコード協会によると、00年に133億5700万ドルにも達していたCDの売り上げは、06年には93億8000万ドルにまで低減。その後も少しずつ額を減らし、08年には54億7500万ドル、15年にはなんと15億2100万ドルにまで激減している。
このような苦境に曝され、米国ではタワーレコードやヴァージン・メガストアズといった大手CD店が次々と撤退。「大手が姿を消し、市中の販売店までなくなってしまえば、文化がなくなるに等しい」(「レコード・ストア・デイ・ジャパン」を運営するミュージックソムリエ協会の吉川氏)との危機感を抱いた個人のレコード店とアーティスト、レーベルが協力を模索。音楽ファンに今一度レコード店へと足を運んでもらうべく、「レコード・ストア・デイ」を開催するに至った。