実際、レコード・ストア・デイが初開催された08年以降、米国におけるアナログレコードの売り上げは右肩上がりで増加してきている。全米レコード協会によると、06年に2600万ドルで底を打ったアナログレコードは、「レコード・ストア・デイ」が初開催された08年には6000万ドルまで売り上げを伸ばし、15年には4億2200万ドルにまで回復している。
それにしても、CDが売り上げを減らし続けてきたのにも関わらず、たった1つのイベントをきっかけに、なぜアナログレコードはここまで売り上げを伸ばすことができたのか。
デジタルとアナログの意外な関係
その鍵を握るのは“デジタルネイティブ”世代である。
音楽産業マーケティング会社「MusicWatch」の調査によると、米国におけるアナログレコード購入者は、13~17歳が21%、18~25歳が26%と25歳以下が半数近くを占めている。25%を占める26~35歳の層まで含めると、35歳以下がアナログレコード購入者の実に7割以上を占め、需要を支えるのが “デジタルネイティブ”世代であることがうかがえる。
このように若年層がレコードを購入する理由について、高解像度デジタル音源、いわゆる“ハイレゾ”の配信を手掛けるオンキヨー&パイオニアイノベーションズの黒澤氏は「若い“デジタルネイティブ”層にとっては、“黒い円盤”自体が物珍しい。生まれてこの方デジタルで音楽を聞いてきたような人がアナログレコードを目にすれば、ジャケ写も大きく見栄えがいいし、クールに感じるのでは」とみる。
また、音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏は、ヴィジュアル面でのかっこ良さのみならず、デジタルでは味わうことのできない“モノ”としてのアナログレコードが持つ魅力について、こう説明する。
「iPhoneなどで音楽を聴くようになると、音楽を聴くことに手間をかける必要はあるのか? と思うが、アナログレコードを聴くということはそれとは違う意味合いで捉えられている。A面からB面へとひっくり返すような手間のかかる行為も、ライブやフェスに行くような、非日常的な体験として受け入れられている。めんどくさいのがいい」