2024年4月19日(金)

赤坂英一の野球丸

2016年4月20日

 この自己申告制度の発案者、熊崎勝彦コミッショナーは元東京地検特捜部長で、リクルート事件、金丸信・自民党副総裁の巨額脱税事件の捜査などに携わり、「落としの熊崎」と異名を取った。退官後の2005年より、コンプライアンス(法令順守)担当のコミッショナー顧問としてNPB入り。主に暴力団排除問題に取り組み、中日の本拠地・ナゴヤドームから反社会勢力と関わりのあった私設応援団をすべて締め出すなど、着実に成果を上げ、14年からコミッショナーに就任した。

啓発活動は選手会が担う米国

 では、期限の25日までにどれだけの選手が“自首”して出るかとなると、甚だ疑問である。失格期間が1年に縮まっても、球団をクビになり、マスコミにも大きく報じられるのだ。1年後に処分が解かれても、プロ野球に復帰できる保証はない。加えて、野球賭博には仲間が付きものだから、自己申告すれば自分だけの問題で済まず、ほかに誰がやっていたのかと所属球団やNPBの担当者に聞かれる。メリットは何一つないのだから。

 この問題、選手会労組はどう考えているのだろうか。元ソフトバンク球団取締役で江戸川大教授の小林至氏によると、「(野球賭博への関与を戒める)啓発活動は米国では、選手会がやるんです。大リーグではキャンプの時に。プロバスケットボールのNBAもそう」(3月31日付毎日新聞「そこが聞きたい」)だという。球団やMLBももちろん協力しているものの、主体的に野球賭博対策を講じているのはむしろ、選手会のほうなのだ。

 日本の選手会も、今回の野球賭博問題では2月のキャンプ中に再発防止のための研修会を主催。開幕前には「二度とこのようなことを起こさない」と嶋基宏会長(楽天)が声明を出した。が、04年の球界再編騒動の最中のストライキ、11年の東日本大震災で経営者側を押し切った開幕延期と比べると、いまひとつ積極さが感じられない。誰が野球賭博をやり、反社会勢力に関わっているか、一番詳しいのは選手たちのはずだから、いまこそ自発的な調査や指導を期待したいのだが。

  
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