2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月26日

サウジとの関係悪化もたらしたオバマの理念外交

 オバマがサウジ国内の反対者の抑圧や、女性蔑視を批判し、その結果サウジをもはや同盟国視していないことは、オバマが外交における理念を重視していることを示しています。米国の外交は建国以来、力の均衡を重視する現実主義よりは、自由、民主主義、人権といった理念を重視する傾向が強く、ウィルソンがその典型的な例です。第二次大戦後ソ連と鋭く対立した冷戦時も、ソ連との覇権争いと並んで、米国の理念に反する共産主義反対の側面が重要でした。

 米国はその後幾多の経験を経て、欧州の伝統的現実外交を推進するようになりましたが、その間にもカーターが「人権外交」を提唱したのをはじめ、自由、民主主義、人権の理念が対外政策に見え隠れします。

 サウジの米国にとっての重要性は、シェールオイルの増産で米国のサウジ依存が減ったこと、イランとの核合意でイランとの関係が進展していることから以前より減少したと言われていますが、オバマがサウジとの関係を「いわゆる」同盟国と言ったのは、これらの事象に先立つ2002年のことです。

 米サウジ関係については、後任大統領が今一度米国にとってのサウジの戦略的重要性を吟味し、それに則った外交を推進する必要があります。

 オバマは、サウジがイランとの間に「ある種の冷たい平和」を達成し、両国は中東で共生すべきである、と言っていますが、サウジとイランの対立の根は深く、このような状態が実現するためには米国が積極的に関与する必要があるでしょう。オバマにそのような関与をする気があるとは思われず、これも後任大統領に委ねられることとなるでしょう。

  
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