「ない袖は振れない」と言い切った東電のメニュー
1月に発表された東電EPのメニューは見事なものでした。
300kWh以下を2つに分けず23.4円/kWhでまとめ、300kWh以上は約1円/kWh高くなっています。電気が基本エネルギーであることには変わりがないのですが、自由化されて番大きな違いは、「赤字」になる料金で販売することはできないということです。
今までは、120kWhまでの赤字を、300kWhまでで埋めるという形だったと思います。この場合、300kWhを切るとその世帯から徴収する料金は赤字ということです。しかし均一な価格にすれば、ほとんど利がなくても赤字にはなりませんからね。
このため、23.4円/kWhという価格、東京電力の場合、利がない価格ではないかと見ています。そして300kWh以上で利を上げ、福島原発の賠償、廃炉費用。そして新規設備の導入に当てると考えられます。
では当初から、そんな目論見で電力自由化が進められたのかというとそうではないと思います。電力自由化がスタートしたのは2000年です。ガンガン日本に原子力発電所を建て、電力料金を下げ、kWh当たり、10円台の料金価格でも利が出ることを想定していたはずです。が、2011年の東日本大震災の日に起こった福島原発の事故で、日本全土の原子力発電は停止します。
料金プランがほとんど変わらないのは、電力を安く供給することができなくなったためです。いかに、政府及び電力会社が原子力発電に頼ろうとしていたかが透けて見えます。これが開き直りにも見える、東電EPの価格プランです。
2017年、東電は総合エネルギー会社に変身
では東電EPの料金プランは未来永劫このままかと問われると違います。人口と工場が集中する東京湾。このエリアの電力を賄ってきた東電は巨大企業です。火力発電所だけでも、十数カ所持っています。そこで使われる燃料は液化天然ガス(以下LNG)。実は日本で最もLNGを使っているのは東電なのです(LNG輸入実績 東電:27.8%、東京ガス:14.8%。2015年版ガス年鑑より)。ガスは基本エネルギーではないですから、電気と違って使えば使うほど安くなります。それを考慮すると、東京電力は東京ガスより安くガスを供給できるはずです。
2017年4月。ガスの自由化が始まります。東電が待っているのは、その瞬間です。電気を売るのはもちろんですが、ガスも売り始めるわけです。関東のユーザーをがっちり確保しようというわけです。しかし電力会社が待ち望んでいるのが、電力自由化ではなく、ガスの自由化ですからね、ちょっと可笑しな話です。別の言い方をすると、2017年以降、電力会社、ガス会社という区分がなくなり、エネルギー会社になるわけです。