いまだぬぐえぬ?中国国内製品への不信感
「子どもにはお金がかかっても仕方がないですよ」と話すのは昨年出産したばかりの王亜男さん。「最近も温度管理されていないワクチンが流通していたという事件がありましたが、中国にはニセモノや粗悪品が多すぎます。子どもにはちゃんとしたものを与えたいんです」。
越境ECで紙オムツ、ベビー服、哺乳瓶、さらには妊娠中に着用する電磁波遮断エプロンまで買いそろえたのが孫毅さんだ。ほぼすべて日本製でそろえたが、福島原発事故の影響を恐れて粉ミルクだけはドイツ製にしたという。確かに値段は中国製よりも高いが、中国に進出している日本の百貨店と比べればリーズナブルだと語った。
中国製品、とりわけベビー用品に対する不信感を募らせたのが08年のメラミン混入粉ミルク事件だ。樹脂の原料となるメラミンを生乳に添加することで、タンパク質含有量が高く検出されるようごまかしていた事件だ。5万人もの乳幼児が腎結石などの健康被害を受けた。事件後、粉ミルクをはじめ海外製のベビー用品の需要は一気に高まった。
日本製の人気に、日本の物流企業も目をつけ始めた。ヤマトホールディングスは5月から中国EC大手「京東集団」と提携した越境EC支援サービスを開始する。これまでも中国郵政集団傘下の企業と提携して、日本メーカーから中国消費者までを直通する物流サービス「ヤマトチャイナダイレクト」を提供していた。
今後は自前では越境ECサイトに出店できない企業向けに、京東集団の運営する越境ECサイト「京東全球購(JDワールドワイド)」で商品だけ出品する場を提供して、「ヤマトチャイナダイレクト」の更なる収入増を狙っている。一方日本郵政はファミリーマートと提携、ファミリーマートの海外店舗を拠点とする越境EC支援を実施する。
中国国家統計局によると、13年の越境EC輸入額は3658億元(約6兆2200億円)。これが14年には1・5倍近い5320億元(約9兆500億円)へと跳ね上がっている。今後も成長が続き、17年には1兆2960億元(22兆300億円)に達すると予測されている。