2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月18日

 ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、4月14日付同紙において、ゲーツ元国防長官がインタビューの中でオバマ外交の問題点を指摘するとともに次の大統領が過剰反応の大統領になることを心配すると述べた、と書いています。要旨は次の通り。

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オバマ外交は“言われる程悪くない”?

 ゲーツ元国防長官は、国防長官としてブッシュの力の展開欲望にも、オバマの懐疑姿勢にも理解を示している。アトランティック誌記事が触発したオバマ外交についての論議の中で、ゲーツは中間の立場を取っている。「オバマの外交は言われる程悪くはない。その響き方がその効果を減殺している」、「そのやり方のため米国の力の主張への躊躇いとして伝わっている。しばしば結果は良いところに落着しているのだが、時間がかかりすぎ、投入資金も不十分で、決定も小刻みであるために、渋々と引きずられ苦悩しながら動いているとのイメージを生み出している。それが政策実施の効果を減殺している」と述べた。

 ゲーツは、今の巨大な国家安全保障会議(NSC)による細部への介入がISや中国への対応を阻害していると批判する。ゲーツのNSC批判は良く知られている。今のスーザン・ライスのNSCには変革が必要だとする。

 ゲーツはシリアやイラクで特殊部隊を使用し、太平洋で航行の自由作戦を強化するなどオバマは「良く練り上げられた」政策をとろうとしているとして評価する。「武力を大きく振りかざす必要はない。重要なことは必要な時には武力行使を厭わないことを明確に示すことだ」と述べた。

 ゲーツはCSISでの講演で、賢明な戦略にはリアリズム、理想主義の双方が必要だと述べた。また、より大きな緊急を要する脅威に対抗するためには独裁者と一時的に共同戦線を組むことも偽善ではない旨述べている。

 ゲーツはIS戦略について明確さが必要だと主張した。イラクやシリアで最終的にいかなる国家が望ましいのか、政策の大目的について政権は決める必要があるとし、「イラクに統一国家が望ましいのか。連邦国家が望ましいのか。シリアに統一国家を望むのか。それぞれの民族に基づく国家が望ましいのか。我々にはそれが分かっていない」と述べた。大統領が指導力を発揮した例としてフランクリン・ルーズベルトが1944年に、戦争終結を待つことなく、IMF、世銀、国連など戦後の世界体制についての検討を開始させたことを挙げた。


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