世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月18日

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 ゲーツは最後に忠告を述べた。「オバマは武力使用に否定的だとみられているため、次の大統領は却って不器用な過剰反応をする可能性がある。自分は過剰反応を心配している」と。

出典:David Ignatius,‘Bob Gates unpacks Obama’s foreign policy, and offers advice to the next president’(Washington Post, April 14, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/bob-gates-unpacks-obamas-foreign-policy-and-offers-advice-to-the-next-president/2016/04/14/1c4904c8-0275-11e6-9d36-33d198ea26c5_story.html

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 この記事は、イグネイシャスが4月13日にゲーツと会見し、書いたものです。この記事を読むとゲーツのオバマ批判が弱くなっているようにも見えます。「オバマの外交は思われるほど悪くはない。その響き方がその効果を減殺している」と述べるとともに、シリアやイラクで特殊部隊を使用し、太平洋で航行の自由作戦を強化するなど「良く練り上げられた」政策を取っているとオバマを評価しているからです。

外交に求められる“二重性”

 しかし、ゲーツがオバマ外交批判から礼賛に変わったとは思われません。ゲーツは、昨年12月3日のワシントンポスト紙掲載の「我々が必要とする次期大統領」と題する寄稿の中で、2013年秋のオバマの対シリア対応(宣言していたレッドラインと違って不介入を決定)などを厳しく批判しました。さらに、オバマ政権下で国防長官を務めた時にホワイト・ハウス(NSCなど)と苦い軋轢を経験しています。この記事でも、政策のやり方等を厳しく具体的に批判しています。

 それにしても、オバマは政策の決定前にしゃべりすぎるのではないでしょうか。指導者が決断に迷うことは十分ありうることですが、政策決定過程では寡黙であるべきです。そして決定は果敢にすることが重要です。マスコミの執拗な問いかけがあるのかもしれませんが、「それへの戦略はまだ決まっていない」と発言したり、任期中にアトランティック誌会見のような「正直すぎる」内情を吐露したりするのは望ましくありません。

 目を引く第二の点は、ゲーツの忠告です。次の大統領はオバマ外交とは反対に過剰反応をする大統領になりはしないかとの心配は、ゲーツの平衡感覚からいうともっともなことです。しかし、オバマの対アジア、中東外交を見れば、正に一定の是正が必要なのではないでしょうか。オバマの8年の外交はミドルパワーの外交であればまだしも、グローバルな責任を持つ米国の外交としては、その正直な意図にもかかわらず、問題があると言わざるを得ません。

 ゲーツは広く尊敬されているバランス感覚のある人です。リアリズムと理想主義の双方が必要だとの発言にも表れています。それは一種の二重性です。実際の外交に当たっては、現実と理想、恐怖と希望、対話と圧力など、こうした「二重性」が非常に重要でしょう。1970年代のソ連のSS20に対するNATOの「二重決定」は、対ソ軍備制限交渉と西側の軍備増強の双方を計る戦略でしたが、それによって後のINF全廃合意が可能となった、という歴史的経緯もあります。

  
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