中船重工によると、16年中にも着工し、18年に調整試運転を終えて19年に洋上試験に入る予定になっているが、搭載する原子炉は明らかにしていない。浮動式プラントで一日の長があるロシアでも、19年に調整試験を開始する予定だ。
中船重工は実証プロジェクトに30億元(約490億円)を投じる。稼働後は40年間の耐用年数期間中の売電収入が226億元に達すると見込む。浮動式プラントの市場規模を1000億元程度と見込む中船重工は、当面の目標として20隻を建造する計画だ。シリーズ生産後には、1隻あたりのコストは20億元程度まで下がるとみている。
浮動式プラントには曳航式と自走式があるが、現在計画されているのは曳航式。中船重工が配置を想定しているのは、東北部の渤海湾と南シナ海。渤海湾での海洋石油開発向けのエネルギー供給手段として利用することも見込んでいるが、ニーズとしてはそれほど大きくない。「小型炉を搭載した浮動式原子力プラントは〝戦略的意義〟を持つ」と中核集団の孫勤董事長が発言する通り、本命は南シナ海の軍事基地とみるべきであろう。
規制当局である環境保護部(国家核安全局)原子力発電安全監督管理局の湯搏局長は、浮動式プラントの最大の問題は災害時の緊急対応能力にあるとしたうえで、海洋や気象、海事等の部門と協力して規制要件を定める必要があるとしている。
浮動式原子力プラントの建造経験は、空母を含む原子力水上艦艇の建造に大きく寄与するともいわれている。中国政府が国家プロジェクトに組み込んだのには納得がいく。
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