2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月27日

 この論説は良い論説です。特に、次の2点で評価できます。

 第一に、米国の国力について、具体的な例を挙げ、相対的に相当に強いとしています。これは、現実を踏まえた正当な評価です。ユーラシアグループのイアン・ブレマーによる「Gゼロ時代到来」という言説はピント外れに思われます。トランプの「米国を再び偉大な国にする」とのスローガンは、今は偉大でないということを前提とした発言です。トランプは、「米国は貿易などで損をしてばかりいて貧しい」などとも言っています。

 しかし、米経済はダイナミックであり、同盟国は多く、ロシア、中国、インドなどの新興国の力は相対的には弱いものに過ぎません。米国は、まだ色々な面で第一人者であり続けているのです。

“弱い米国”という誤った認識が世界秩序を揺るがせる

 孫子は「敵を知り、己を知れば百戦戦って危うからず」と言っていますが、己を知ることは戦略を考える上で重要です。自己の過小評価や過大評価は、戦略的失敗につながりやすいものです。

 ブレマーやトランプは今の米国を過小評価していますが、「弱い米国」というのは、事実認識の面で間違っています。そういう間違った認識に基づく戦略は世界秩序を揺るがせることにつながるでしょう。

 第二に、国際秩序が崩壊した場合、米国も影響を受けないではいられない、との認識をはっきりさせ、孤立主義を否定し、権威主義勢力から脅威を受けている現在の国際秩序を守るべし、と強く主張しています。情勢判断、政策判断の両面で正しいと思われます。

 米外交には孤立主義と米例外主義の二つが伝統としてあるように見えます。オバマは孤立主義ではありませんでしたが、米外交に「普通の国」路線のようなものを導入、世界的リーダーシップについては、時折消極性を見せたように思われます。特に対外軍事介入には消極的でした。イラク戦争、アフガン戦争の後遺症はそれほど米国民に影響を与え、オバマの当選もそれによる面が強かったからでしょう。

 力があっても使わないと意味がありません。その結果、国際秩序のタガが緩んだ点もあると思われます。もしヒラリー・クリントンが大統領になれば、その点は改善されるでしょう。

  
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