低出生体重児と知的障がい児の増加
わが国では、この50年で妊産婦死亡率や5歳未満児死亡率の低下など、医療レベルの指標は世界でトップレベルになり、安全な出産環境が整ったにもかかわらず、出生率は下がり続け、世界で一番子ども(15歳以下)率の低い(12.8%)国になりました(注2)。
また、日本独自の注目すべき変化として、昭和50年を境に平均出生体重が増加から減少に転じ、この30年間で出生体重が250g低下しました。今も減少が続いており、低出生体重児(2500g未満)の割合は2011年時点で9.6%(女児の10.8%、男児の8.5%)と増え続けています(図2)。
これについては、早産の増加、妊娠期間の短縮、多胎児の増加、メディアの影響や自己肯定観低下による女性の痩身願望、出産年齢の高齢化(図1)など様々な要因が挙げられますが、乳児死亡率が低いなど医療レベルが高く、経済的に発展しているにもかかわらず低出生体重児が増加しているというのは海外にはあまり見られない現象であり、今後、成長してからの健康状態がどのように変わっていくのかを慎重に見守る必要がありそうです。また、低出生体重児は死亡率が高く様々な合併症を起こしやすいなど、周囲からの特別な配慮が必要であり、親の心配や気苦労は想像に難くありません。
また、1973~2012年の40年間で知的障がい児のうち中等度障害で発生率の増加がみられ、1973年には出生千当たりの発生率が2.4名だった中等度障害児の割合が、1993年ころを境として著しく増加し、2012年には16.7名となりました(図3の灰色部分:中等度、黒色:重度知的障がいとして認定されたもの)(注3)。
特別児童扶養手当の認定数も激増しています。(図4の赤色:知的障がい児、黄色:精神障がい児)
不妊治療で授かった赤ちゃんも増加し(図5)(注4)、産科管理も産後管理も慎重にならざるを得なくなります。このような要因が複雑に絡み合い、40年前に比べると、妊娠・出産に関する懸念事項や出産後の育てにくさを感じる親が増えていることが推察されます。