2024年4月19日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年6月1日

 中国はこのG20首脳会議を、自らの孤立状態を打破するための外交チャンスとして最大限に利用しようと考えるだろう。

 G20の参加国には、今や中国唯一の「盟友」と言えるロシアと、中国と友好関係にある韓国などの国があり、中国の思惑としては当然、議長国の立場を最大限に活用して、これらの国を巻き込んで日米などの「反中国家」の中国包囲網に対する反撃を試みるだろう。

 実は伊勢志摩サミット開幕日の5月26日、中国の王毅外相は、G20首脳会議まで27日で100日に迫ったとして外務省で記者会見を行ったが、その中で王氏は、「G20は先進国と途上国が対等な立場で同じテーブルを囲み、平等に協議して決める場であり、時代の発展の潮流に合致している」と述べた。

 彼はここで、G20を持ち上げることによって先進国の「金持ちクラブ」であるG7を暗に貶めている。ここから、中国の今後の戦略がはっきりと見て取れるだろう。

 つまり、中国を批判するG7を極力貶めてその無力化を図った上で、今回中国が主導権を握るG20を国際社会の中心に持っていく。そうすることによって、劣勢を一気に挽回して中国包囲網を打ち破っていく、ということである。

 これこそが中国政府にとっての起死回生の次なる手である。南シナ海の平和と秩序を守るための国際社会と、覇権主義国家中国との闘いの舞台はいよいよ、中国の杭州へ移されようとしている。

  
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