2024年12月22日(日)

解体 ロシア外交

2016年6月8日

モンテネグロのNATO加盟に激しく反発

 まずはNATO拡大の動きだ。旧ユーゴスラヴィアのモンテネグロは、2015年12月2日にNATO加盟を認められた。しかし、モンテネグロもロシアが影響力を維持しているセルビアと2006年まで「共同国家」を形成していたなど近い関係にあることもあり、ロシアは激しく反発し、対抗措置をちらつかせた。特に、同年12月12日に、1999年のNATOによる旧ユーゴ空爆に反発する人々やロシアとの関係を重視する人を中心とした数千人がNATO加盟に反対する抗議デモを行うと、ロシアはそれを大きく扱ったのだった。

ミサイル防衛システムで対米関係が悪化

 次に、やはりロシアが嫌悪するミサイル防衛(MD)システムの展開である。MDシステムが米露間の最も深刻な問題となったのは、ブッシュ米大統領時代に計画されたポーランドとチェコへのMDシステムの配備計画であった。設置の理由をイラン対策とする米国に対し、ロシアは当時自国が賃貸使用していたアゼルバイジャンのレーダー基地の共同利用やロシア南部に新規に米国のイラン監視用の施設を建設することなどを「踏み絵」として提示したが、米国側がそのオファーに応じなかったことから、やはり米国のMD計画はロシアを念頭になされているのだとロシア側は確信し、米国に対する反発を強めた。

 だが、米国でバラク・オバマが大統領になると、新政権はロシアに関係の「リセット」を提案した。そして、短期的には「リセット」が機能し、米露間の諸問題が一時的にはかなり改善され、その中には、ブッシュ時代のMDシステム配備計画を取りやめるということも含まれていた。だが、「リセット」による関係改善は長くは続かず、結局は2011年に可動式のより低レベルのMDシステム(迎撃ミサイル)をポーランド、ルーマニアに、そして、ミサイル発射を捕捉する早期警戒レーダーをトルコに設置することが決められていた。トルコのものは、2012年1月から稼働を始めていたが、それ以外のものは最近顕著に動きがみられる。

 まず、5月12日に、ルーマニア南部のデベゼル(首都・ブカレストの南西180km)に設置された欧州MDシステムの地上配備型迎撃ミサイル(SM2対空ミサイル)発射基地の運用が始まった。建設には8億ドルが使われ、建設は米国が行ったが、運用はNATOに移管される。この運用開始においても、米国は(すでに和解したはずの)イランを対象としているとし、ロシアに対して作られたものではないと強調した。だが、ルーマニアのヨハニス大統領もNATO戦力を東欧に確保することの重要性を述べ、自国のみならずウクライナにも面する黒海にもNATOの海軍部隊を常駐させるよう訴えるなど、関係国の空気は明らかにロシアを意識したものであった。


新着記事

»もっと見る