2024年12月22日(日)

解体 ロシア外交

2016年6月8日

 加えて、5月13日に、米国はポーランドで、ルーマニアに次いで二番目となる地上配備型迎撃ミサイル基地の建設を開始した。2018年には運用が開始される予定である。

 さらに、ウクライナ危機を受け、NATOはポーランドとバルト諸国に新たな抑止力を準備している。5月1日にNATOのストルテンベルグ事務総長が、「バルト3国とポーランドに4大隊を展開する可能性を議論している」と述べたのである。大隊は通常、数百人~千人で構成されるので、かなりの規模の兵力が想定されていると言ってよい。本提案については、6月の国防相理事会で協議した上で、7月にポーランドのワルシャワで開かれるNATO首脳会議にて最終的な議決が図られる予定である。

「大規模な部隊」をめぐり対抗

 なお、MDシステムは、弾道ミサイルが打ち上げられた際に、大気圏に再突入する前に追跡センサーがその弾道を解析し、宇宙で迎撃することにより機能するが、迎撃ミサイルは艦船か地上基地から発射可能であるのだが、NATO諸国では何らかの形で、その発射能力を得ようとする動きが目立ってきている。例えば、デンマークは最低でも1隻のフリゲート艦の性能を高めて、弾道ミサイルセンターを設置しようとしている。また、オランダは艦船にレーダーを設置しており、上述のようにトルコも米国のレーダー基地を保有している。さらにスペインにも、米国が4席の艦船を配備している。

 これらの動きに、ロシアは激しく反発している。反ロシア的な軍事施設が事もあろうに旧共産諸国に設置され、ロシア包囲網がますます強化されてきているからである。しかも、ロシアは米国がリセットでの公約を破ってMD基地を建設したことにも激しく憤っている。

 5月13日には、ロシアのプーチン大統領が、米国のMDは軍事転用が可能で、防衛システムはなく、米国の核戦力の一部だと述べ、中距離核戦力(INF)廃棄条約違反だとして激しく反発するとともに、ポーランドでのMDシステム建設が着手されたことも批判した。加えて、プーチンは、NATO側が依然としてMDシステムを対イラン政策だと主張していることについても、和解したイランにもはや驚異はないはずだとして、NATOの政策の根拠がロシアにあることを示唆した上で、ロシアは核戦力のバランス維持のために何でもする用意があることも示した。

 また、1997年、ロシアとNATOは、「東欧やバルト諸国に大規模な部隊を永続的に追加配備することは控える」とした基本文書を締結しているのだが、ロシアは NATOが予定している4大隊の展開を違反だとして批判している。それに対し、ストルテンベルグ氏は、4大隊は「大規模な部隊」に当たらないとし、ロシアの反発には耳を貸していない。


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