世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月29日

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ロシアは悪いことは悪いが……

 最近の米国メディアにおける対ロ論調は、「プーチンのロシア=悪の帝国」的なものと、「プーチンを反米にしたのは米国がNATOを一方的に拡大する等、ロシア人の気持ちに無神経だったからだ。プーチン・ロシアとは対話・協力が必要」というものの二極に分裂しています。

 最近ボストンで行われた、米国のロシア専門家による会議では、米国のロシア報道が現実から遊離していること、ワシントンの政治家はそのような報道を鵜呑みにして党派的な立場からロシア封じ込め、ロシア・取り込み派の二つに分かれて争い、「真実はこうだ」とでも言おうものならロシアのスパイ呼ばわりして抑えにかかるとの不満が述べられています。

 この社説は一見、反ロ、反プーチンの立場に明確にコミットし、米国、西側に対応を呼びかけたように見えますが、実は、西側にはロシアとの対話の維持を、ロシア側には西側への譲歩と、西側との協力を呼びかけ、それこそがロシアの国際的地位の向上をもたらすものだとするところに本旨があると思われます。

 この「ロシアは悪いことは悪いが、東西は対話して協力関係に歩み寄るべし」というひねった論調は、一方では強いロシア批判の姿勢を示すことによって、プーチン・ロシアに対して宥和的発言を繰り返すトランプ大統領候補を貶めるとともに 、他方では民主党政権が誕生した暁にはロシアに対して抑止とエンゲージのバランスの取れた両輪政策を進めるよう暗に釘をさしたものと言えるでしょう。

 7月8~9日に、ワルシャワでNATO首脳会議が開かれようとしています。問題は、これがどこまで西側とロシアの関係を悪化させるかということですが、ロシアには経済低下という力の限界、NATO側には足並みの乱れという限界があり、結果は「泰山鳴動して鼠一匹」になるのではないでしょうか。米ロ対立、NATO・ロシア対立は、まだ双方のコントロール内に収まっていると言ってよいのでしょう。

  
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