2024年5月5日(日)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年1月14日

●ファーブルさんがいて、ムツゴロウさんがいて、いまの鈴木先生がいると。高校の生物部に入ってからは生物学に邁進ですか?

——それほどでもないですが、当時の生物部の先輩たちは、シダの採集をやっていたんです。それで1年生もシダを集めた。植物採集の中でも、シダですからね。花が咲かないし、やたら渋い存在でしょ。植物ファンの世界では、いろいろな植物を見てきた人が最後に行き着くのがシダじゃないかと思うんですけどね。ぼくは最初がシダだったんです。

 ぼくが住んでいたのは海抜0メートル地帯。木曽川、長良川を渡って岐阜県まで行くと、養老山地があります。標高900メートルぐらいの山に、標高0メートルのところから自転車で1時間30分以上かけて上って、そこでシダを採って標本を作るのが僕の主な活動。集めてきて図鑑と照らし合わせても、どれがどれなのかよくわからないんですね。いろんな種類のシダを集めて喜んでるだけ、という感じでした。

サンプリングした砂。このなかにクマムシがいるかどうかは、顕微鏡で覗いてみないとわからない。

 採集は宝探しみたいなもんで、楽しかったですよ。いろいろ種類が集まれば盛り上がる。フィールドワークだよね。探して、探して、あった! ってのが楽しい。ハンティングに近い。コレクターとは違うんだよね。第三者からみると同じでしょうけども。なんとなく集まっちゃったものを整理していくんじゃなくて、自分で探して探してゲットするのが好きですね。

 昆虫の世界だと、売買の世界があるけど、ぼくは昆虫をお金で買うことにはまったく興味がない。自分で探して採ることがおもしろいと思うから。でもシダを採集して楽しかったけど、のめりこんだわけではないです。

●高校を出て、名古屋大学に入ったんですね。

——名大は学部別受験で、ぼくは理学部で受験しました。1・2年は教養部で3年から学科に入るんです。入学してからは、高校の流れで、生物研究会。といっても、山歩きとバードウォッチングばかりでしたね。

『ソロモンの指環』(コンラート ローレンツ 著、日高 敏隆訳、早川書房)

 受験のときは、京都大学も考えていました。このまえ亡くなった日高敏隆先生が書いた『ソロモンの指環』という本があります。この動物行動学の古典を高校1年のときに読んで、動物行動学という世界があると知って、感激したんですね。動物の生態とか生き様とか生活史を研究する学問があるんだ、と。自分もそういうことをやりたいと思いましたね。で、受験を考えるにあたって、日高研目当てで京大に行きたいなと思いました。あと、京大には農学部に農林生物学科があって、当時は昆虫の生態学をやる人に人気があったんですね。

 だけど、金銭的なこともあって自宅から通える地元の国立大しか選択肢になかった。それで名古屋大を受けました。名大にも理学部生物学教室があったので、そこでも生物がやれるなと思って。


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