●このときクマムシを見て思ったのはどういうことでした?
——かわいいというか、服の胸にワンポイントマークとしてついてそうだな、と思いました。
●あー、ジャック・ニクラウス(ゴールデン・ベア)のクマのマークみたいですね。
自分で捕り、調べていくのは地道で時間のかかる作業だが、これらの標本が貴重な資料となる。
——まさしくそういう感じですよ。そのときから頭の片隅にはあったし、同僚に実物を見せてもらったこともあるけど、研究しようとは思わなかったんです。それが、2000年正月に、いよいよ煮詰まり気味になって、テーマを探していて、ふと思い立って大学のコケを水に浸して顕微鏡でのぞいて、クマムシに再会しちゃった。最初の2〜3カ月はぼーっとみていただけ。わりと簡単に飼えるとわかって、オニクマムシの生活を調べてみたという。
2000年からもう10年近くたつけど、まだ論文は3本しか出てないんです。ほんとは毎年1本ずつぐらい出しておきたいところ。でも一人でやってるんでね。授業もあるから、時間がなかなかとれないし。大きい研究室だったら、教授がいて、助手がいて、学生がいて、チームとして進めることができるんだろうけど。
●先生がそういうふうに組織を作ってやるというのは?
——ぼくの性格では難しいね。自分がやりたいことは自分でやりたいから。研究室を主宰して指導していくというのは向かないんだよね。
●なるほど、緩歩動物のようにゆっくり自分でやっていくわけですね。
◎略歴
■鈴木 忠(すずき・あつし)
慶応義塾大学医学部准教授。1960年愛知県生まれ。名古屋大学卒、同大学院を単位取得退学後、浜松医科大学を経て現職。2000年にクマムシの世界にはまる。近年は特に日本の海産クマムシの研究に注力している。
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