●最近はコケのクマムシより海のクマムシに夢中なんですね。
——コケのほうは、東大などでゲノム解読プロジェクトもひと段落しましたし、ぼくの興味は、今は謎が多い海のほうに向いています。
●海で採集しているときと、研究室で顕微鏡のぞいているときと、どっちが楽しいですか?
——海では砂を掘っているだけだから、肉眼でクマムシが見えないのがちょっとつまらんといえばつまらんのですが。その砂にクマムシがいるかどうかは、研究室で顕微鏡を覗いてみないとわからない。だから、クマムシの場合は採集の喜びにタイムラグがあるんだよね。
だから、すぐには「やったー!」という喜びには繋がりませんが、僕は小さい頃から潮だまりに遊びに行くのが好きだったし、海に行って採集することも大きな楽しみなんです。
これからは、日本の海のクマムシをどんどん紹介していくつもり。日本の近辺、北太平洋あたりは、深い海溝もあってすごく特殊なところもある。そこの動物相の中の、クマムシ部門を担当したいな、と思っています。
海のクマムシ170種のうち、日本で見つかった新種はたった4種。そんなことはあり得ないんですよ。いっぱいいるのに知られていないまま、手つかずで残っている。これはいかん、というよりも、ああ、ぼくに残しておいてくれてよかった、と思っているところです。
◎略歴
■鈴木 忠(すずき・あつし)
慶応義塾大学医学部准教授。1960年愛知県生まれ。名古屋大学卒、同大学院を単位取得退学後、浜松医科大学を経て現職。2000年にクマムシの世界にはまる。近年は特に日本の海産クマムシの研究に注力している。
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