2024年12月20日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年7月25日

皆が勤勉と倹約に努めると、売れ残りが発生し、失業が増える

 しかし、バブルが崩壊してみると、設備投資需要は小さくなってしまいました。そうなると、物が余るようになったのです。皆が勤勉に働いて大量の物を作り、皆が倹約に努めて物を買わないのですから、当然のことです。そこで、売れ残った物を外国に売ろうとしましたが、それには限度がありました。

 日本が巨額の輸出をすると、まずは貿易摩擦として外国政府の怒りを買ったのです。加えて、輸出企業が持ち帰ったドルを売りに出すため、ドル安円高になり、輸出採算が悪化しました。つまり、売れ残った物を無限に外国に売り続ける事は出来ないのです。

 そうなると、企業は生産を減らしますから、雇用も減らします。そうなると、失業が増えます。この失業の増加こそが、バブル崩壊後の日本経済の諸悪の根源だったのです。

デフレスパイラルの原因は失業だった

 バブル崩壊後の日本経済は、デフレスパイラルに陥っていたと言われています。消費者物価統計を見ると、それほど下がっているわけではありませんが、「消費者物価統計というものが、統計作成上の諸問題によって物価上昇率が高めに出る傾向がある」という事を考慮すれば、たしかにデフレスパイラルだったと言えるでしょう。

 失業者が多いと、彼等は消費を抑えますから物が売れなくなり、物の需給が緩んで物価が下がります。ディマンド・プル・インフレの反対ですね。また、失業者が多いと、労働力需給の緩みによって賃金が下がります。そうなると、サービス産業などで値下げ競争が起こります。コスト・プッシュ・インフレの反対ですね。要するに、失業はデフレの源なのです。

 デフレになると、物が売れなくなります。人々が更なる値下がりを予想して買い控えを行なうようになるからです。設備投資も手控えられるでしょう。借金をして工場を建てたとして、製品価格はデフレで下がっていくのに借金は減って行かないのでは、採算を採るのが難しいからです。要するに、デフレになると景気が悪くなるのです。そうなると失業が増えて、さらなるデフレを招くことになります。スパイラル(悪循環)ですね。


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