2024年12月20日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年7月25日

 これは、「実質金利が高くなるから」という説明も可能です。実質金利というのは、金利から物価上昇率(厳密には予想物価上昇率)を差し引いた値のことです。これが設備投資などを考える際に重要なのです。物価が20%上昇している国で金利が10%であれば、人々は喜んで借金をして投資を行うでしょうし、買い急ぎも行うでしょう。一方で、金利がゼロでも物価が下がっている国では、人々は買い控えをして貯金に励むでしょう。要するに、金利を見る際には物価上昇率との対比で見ないと、景気への影響はわからない、という事なのです。

財政赤字の元凶も失業だった

 失業が増えると、失業対策として公共事業が行われるので、財政赤字が増えます。それだけではありません。増税しようとすると、「増税をしたら景気が悪化して失業が増える。失業対策として公共投資が増えるから、財政赤字がかえって増えてしまう」といった反対論が高まります。

 これは、増税が嫌だから言い訳として言っている論者もいるでしょうが、本当に財政赤字を心配している論者もいるでしょう。実際、増税で景気が悪化して、財政がかえって悪化したと考えられる事例も見られているのです。行政コストの削減も同様です。行政コストの削減は、失業に直結する場合もあるので、増税以上に抵抗が強い場合もあるでしょう。

少子化の一因も失業だった

 失業者が多いので、企業は正社員として労働者を囲い込まなくても、何時でも安い非正規労働者が確保出来ました。そこで、企業は正社員を非正規社員で置き換えて行ったのです。非正規労働というのは、従来は主婦や学生の小遣い稼ぎが中心でしたから、時給が低くても社会問題にはなりませんでしたが、これで生計を立てようとする人が増えてくると、「ワーキング・プア」の問題が出てきます。

 ワーキング・プアは、自分の生活が苦しいだけでなく、結婚相手を見つける事が難しかったり、子供を産む事を諦めたりするケースが少なくないのです。こうして考えると、少子化が進んだ一因は失業者が多かったことだ、と言えるわけです。

 子どもが減ると、育児用品などの需要が落ち込みますから、景気が悪化します。したがって、これも少子化と不景気のスパイラルになっていた、というわけなのです。

【参考記事】

 本稿によって、勤勉と倹約によって物が余ったことが、長期停滞の原因であることが御理解いただけたと思います。しかし今後は、少子高齢化により労働力が不足し、物が余らなくなります。そうなると日本経済の様々な問題が一気に解決して黄金時代が来るかも知れません。そのあたりは下記の拙稿を御覧いただければ幸いです。

 また、勤勉と倹約が問題を引き起こすことを御子様にも御理解いただくため、アリ国とキリギリス国の物語にしてみましたので、よろしければ御子様たちに下記の拙稿を御紹介いただければ幸いです。

少子高齢化で日本経済が迎える黄金時代

アリとキリギリスで読み解く日本経済

  
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