担当する子の学力を一日も早く伸ばすには、その子がどんな環境で育っているのかを知りたいのです。子どもを伸ばすのは、学校や塾で習うことや、習い事で身につけることばかりではありません。もちろん友達との交流も重要ですが、なによりも親が持つ経験と知識を活かさない手はありません。
ですから私が面談する際には、親御さんの仕事上の技術をどんどん使ってもらうようにしています。
「プロジェクトをマネジメントする際に、メンバーそれぞれのPDCA管理に入る前にまずやることって何ですか?・・・そうですよね、目標を数字で表した上で、KPIを設定しますよね。同じ視点で彼の算数の学習プランを立てていくなら・・・」
「最近管轄のグループでチームビルディングに取り組まれたそうですね。そのプロセスを思い出してくださいね。今まさに、娘さんと、お父さんとお母さん、塾の先生をチームビルディングする時なわけです。さて、必要な工程としては何々が挙げられそうですか?」
「アジェンダ」も作るし、「バッファー」も持たせるし、「マズローの欲求五段階」だって意識します。「内発的動機付け」も「80対20の法則」も、「TOC(制約条件の理論)」もしょっちゅう出てきます。
ビジネススキルが家庭に客観性をもたらしてくれる
お父さん、お母さんがビジネスを通じて勉強していること、経験値を高めていることを、少しアレンジすれば子育てにパワフルに活きてくるのです。このアプローチはお父さん、お母さんを問わず好評で、実際成果が上がるのです。
それはそうですね、自分自身が子どもとして育てられた経験値だけに基づいて、親がわが子を育てようとすれば、どうしても偏った見方になるし感情が入りすぎます。「やはり専門家に任せよう。塾の先生も親は口出しするなと言うし」と、子どもの邪魔をしないでおこうと考える方もいます。しかし、ビジネススキルが子育てに活かせると分かれば、がぜん自信がわいてくるようです。「仕事でいつも使っている方法でいいなら、自分にもできます!」と。
ビジネススキルを子育てに活かすメリットは、第一に客観性が得られることです。多くの研究と実践に基づく客観的な知見があり、確立された方法論がありますから、親個人の経験に依存しません。だから冷静になれ、客観的な立場からわが子を見ることができるのです。親の立場で子どもに言って聞かせるのではなく、ビジネススキルを用いる先輩として後輩にアドバイスするスタンスに立つイメージです。