2024年7月20日(土)

『いわきより愛を込めて』

2016年8月15日

 勿来駅で普通列車に乗り換えて、南台仮設に近い植田駅についたのが11時24分。東京から約2時間半の行程である。勿来駅での待ち合わせ時間が16分間あったが、とても寒かった記憶がある。勿来の関を越えれば東北。東北はやはり気温が一段低い。

 植田駅で腹拵えをするため、駅前で飲食店を探した。開いていたのは「浜の駅 ふらっと」一軒だけである。入り口から店内を覗くと、魚介を中心にした惣菜類がカウンターに並んでおり、奥のテーブルで食事もできるようだった。壁には慰問に訪れたらしい芸能人の写真が何枚か飾ってある。500円の焼き魚定食を注文。魚は中型のアジ。小鉢がいくつかついて、リーズナブルだ。

 「小浜港にあった店が津波で流されちゃって、ここに移ってきたんだよ。魚は小浜のじゃないよ、青森のだよ」

 店主らしい元気なおばさんが話しかけてきた。駅前にはタクシーが何台か止まっていたが、南台仮設に取材に行くなら復興支援バスに乗った方がいいと、かなり強硬に勧められた。その方が安上がりだと。

 「ほら、あのバスだよ、あれに乗りな。お店の名前は、ふらっとです!」

南台仮設に到着

福田氏(左)、中谷氏

 店を出しな、おばさんの声が追ってきた。勧めに従って、植田駅前から復興支援バスに乗り込む。運行しているのは新常磐交通。乗客は、私以外には中年の女性がひとりだけである。パスを持っていると無料で乗れるらしい。

 途中、「NEWクレラップ」のクレハ(旧呉羽化学工業)などの大きな工場がいくつか見えたが、そこを過ぎると田畑が広がるばかりである。南台仮設はその名の通り高台にあって、周囲をぐるりと一戸建ての住宅群に取り込まれている。敷地の広い新しい家が多い。仮設内にはデイサービスと集会所、食料品や日用品を販売する店舗があって、最低限の生活が営めるようになっている。

 慰霊祭が行われる集会場に向かうと、すでに福田さんと中谷さんが来ていた。慰霊祭の会場入り口には、双葉町で撮影してきた写真が展示してあった。どの写真も“突然に人間だけがいなくなった状態”を写し出しているという点で共通している。たとえば、中谷さんのお子さんが通っていた保育園の写真を見ると、外観はまったく普通の保育園なのだが、玄関に丈の高い雑草が生い茂っていたりするのである。


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