中国政府が昨年の年末ごろからから、これまで見たことのないような喧嘩腰の外交姿勢を強めてきている。
2009年12月に開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)で、中国政府は世界の注目を集める中、堂々と新たな枠組みづくりを妨害するような暴挙に出た。
これが中国の「喧嘩腰外交」の「お披露目」となった訳だが、その1月後、イギリス人死刑囚の死刑執行の一件を巡って中国はまた、イギリス政府との激しい外交応酬を展開することになった。
英中関係を悪化させた事件
07年9月、パキスタン系イギリス人の男性が中国の新疆ウイグル自治区でヘロイン約4kgを所持したことで逮捕され、その後、同自治区の裁判所によって死刑判決を言い渡された。同死刑囚は控訴したが、09年10月に棄却され刑が確定した。
それ以来、イギリス政府と同国の人権団体は「死刑囚には躁鬱(そううつ)病と妄想癖がある」とし、中国の胡錦濤国家主席に書簡を送るなどして精神鑑定の実施と減刑を求め続けた。イギリス政府に至っては、27回にわたって「寛大な措置」をとるようと中国政府に嘆願し、COP15の場でも、ブラウン首相は温家宝首相に直訴した。
しかし英政府からの嘆願も直訴も、中国側によって完全に黙殺された。09年12月29日、イギリス政府とメディアからの猛反発もどこ吹く風、中国側はとうとう死刑の執行に踏み切った。
それを受け、イギリスのブラウン首相は、「最大限の強い言葉で死刑執行を非難する」との声明を発表した。30日付英紙タイムズも、10年1~2月に計画されていたブラウン首相の訪中計画は延期されたと報じている。
異様な執念で死刑の執行に固持した中国側の頑な姿勢が原因で、英中関係はドン底に陥っている様相である。
中国は法治国家か?
中国側はこの件について、「中国は法治国家であり、死刑の執行は当然」との立場を貫いているが、今までの中国のやり方からすれば、このような建前はとても納得できるものではない。そもそも、中国は本当の法治国家となったためしはないし、これまで、たとえば対米外交の改善に使うカードとして、中国の国内法に基づいて裁かれた服役中の政治犯を、アメリカの要請にしたがって国外に送り出すことは度々あった。
つまり、国益獲得の外交展開のために、国内法を捻じ曲げてでも諸大国との取引に応じてきたことが、中国政府の一貫とした「柔軟姿勢」だったのである。