2024年12月22日(日)

『山旅々』編集者の「山旅のすすめ」

2016年9月23日

世界の中の日本という国

 日本の冬山を登ったことがある人であればよくわかると思うのですが、日本の山々は世界一の多雪地域にあるんです。日本海に流れ込む対馬海流が水蒸気を盛んに上げ、この水蒸気をシベリアからの冷たい季節風が雪に変え、その雪が山地に積もるという、日本列島という場所だからこそ生じる現象で、緯度から想像するより多雪なんですね。

写真を拡大 ハイマツ群生地から眺める白馬岳の小屋

 このシベリアからの季節風とヒマラヤ山脈の方から流れてくるジェット気流によって非常に強風であるというのも日本の冬山を厳しくしている原因のひとつで、多雪・強風という自然現象によってハイマツの分布が形成されているようです。

 ハイマツを雪が覆う事で厳しい冬の環境からこの植物を救い、夏の時期に雪が解けてハイマツが顔を出すことが出来れば光合成ができ生きていける。いわゆる雪が多すぎても少なすぎても生きていけないんですね。ちょっと脱線しますが、こういう事象からハイマツの背丈というのが冬の雪の深さを推定することができるともいえて、夏場歩いていて冬場の積雪を想像することができるのも面白い趣きかと思います。

 このようにハイマツが生きていけない土地が空くと、コマクサ・チングルマ・ニッコウキスゲ・ハクサンチドリといった別の高山植物が分布することになります。これが私たちがみる高山植物なんですね。ハイマツが生きていけないような場所に分布している高山植物ですから、とにかく悪条件に耐えて生活しているといえます。ハイマツも高山植物も僕たちは大事にしなければなりません。

ハイマツ(左上)、コマクサ(右上) ニッコウキスゲ(左下)、ハクサンチドリ(右下)

 このように強風・多雪環境にある日本だからこそ生まれることが出来た高山植物であり、更に強風地や残雪周辺、やや風の弱い場所やハイマツ群落の周辺……というように土地の違いによって生育する植物の違いが見られ、このことが日本の山を美しく魅せている要因なんです。

 また夏場でも雪渓が残る山を見ると緑と白のコントラストが美しい。白馬岳・蝶ヶ岳・爺ヶ岳など雪渓や植物に因んだ山の名前があるのも不思議ではないと感慨深くなります。

雪渓が織りなす山の景色(飯豊山)

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