日本の山を改めて考えてみる
『日本の山は美しい』
こう思うのには2つの理由があります。それは大きく俯瞰して、山を縦に観察したときと横に観察したときの景色の豊かさによるものです。このことは日本だからこそ生じる事象で、それに気づいていない方々が多いように思うのです。
今回は日本における自然美を改めて知ることで、ハイキングでも登山でも……歩くことが厳しければ遠くから山を眺めるのでもいいから、より日本の山を、ひいては日本という国を愛でていただければと思うのです。
山を縦に観察してみる
登山をする人にとっては身近なお話になるかもしれませんが、改めて知ってみると「なるほど」と思っていただけるように、世界全体を眺める中で、日本の山を抜き出して縦に観察してみたいと思うのです。
縦に観察するというのは標高という考えに則って景色の豊かさを見てみようという試みです。
まずはじめに、あたり前のお話になりますが山では高く登るほど気温が低下します。そのため、気温に応じた植生の配列ができあがります。100メートル登ると0.6度下がると言われておりますから、下界が気温30度の季節に約3,700メートルの富士山の頂上は、凄く大雑把ですが気温8度程となる訳です。だから山に登れば登山口から登頂を果たすまでに様々な植物に巡りあうというのも不思議ではありません。
日本アルプスなどの山に高山植物が分布しているということも、誰も不思議と思わないのではないでしょうか?けれども世界規模で日本の山を観察すると、ずいぶんと南に位置する日本列島にある山で、しかもそれほど標高もない山に高山植物がたくさんあるというのは非常に不思議なことのようなのです。
『森林限界』という言葉を耳にしたことがありますでしょうか? 森林限界というのは名前の通り、気候が寒冷になって樹木が生育できない限界線のことをいいます。これを越えると高山帯といってハイマツやさまざまな高山植物が生息する場所になるのです。この森林限界は南北に長い日本列島ですから北海道では1,600メートル付近、本州中部では2,600メートル付近と、同じ日本なのに違いがあるのも面白いところです。北海道ではそんなに高く登らなくても高山植物を楽しめるんですね。
この高山帯と呼ばれる場所に僕たちは高山植物を見るわけですが、何故それが不思議なことなのかを紐解いていきたいと思います。
この高山帯と言われる場所を歩いているとハイマツを多く見かけます。しかしながら全てをこのハイマツが覆いつくしているかと言われるとそうではないのです。まだら状に分布しているんですね。これには理由があって、それこそが日本ならではの条件が及ぼす結果なんです。