2024年4月20日(土)

ドローン・ジャーナリズム

2016年9月6日

良いドローン、イコール良い映像ではない

 良いカメラを買ったからというだけでは良い写真が撮れないのと同じように、性能の良いドローンを持っているからといって、必ずしも素晴らしい映像が撮れるということはない。つまり、良い機材だけでは仕事は来ないし成立しない。私が普段重視しているのはドローンを飛ばすことのみならず、空撮に至るまでのプロセスだ。

 具体的には離陸地点をどこにするべきかを検討することや、その場所にどうやって行くかを計画することである。むしろドローンを飛ばすこと自体よりも、そのプロセスを実行していく方が時間も労力も要する。

 例えば、冬山で樹氷を空撮するためには何日も前から気象を観測しなければならないし、アイゼンやスノーシューなど冬山の装備を整えておく必要がある。

 また氷点下の世界ではドローンのリチウムポリマーバッテリーが低出力状態に陥るためバッテリーの加温や保温にも策を講じなければならない。せっかく何時間もかけて雪山を登山しても撮影できなければ仕事にならない。こういった一つひとつの案件に応じた丁寧な下準備が、クオリティーの高い空撮につながると考える。

 ドローン業界の状況は約20年前のインターネットが普及していく過程とよく似ている。今ではメジャーなウェブデザイナーという職種は、当時は存在しなかった。グラフィックデザイナーがその役割を担うことも多く、それゆえこれまでの紙媒体との差別化もうまく行えない時期もあった。ビジュアル重視の紙芝居のようなウェブサイトは最近になって淘汰され、ウェブ本来のポテンシャルがようやく発揮されるようになった。

 現在のドローンパイロット業界は、スチールや映像のカメラマンや、ウェブ制作従事者、ラジコン業界の延長線上でドローンを飛ばしている人が多いと思う。私自身もシステム開発やウェブ制作の仕事を約20年続けており、最近、空撮事業へのシフトをはじめた者である。なので、過去、または現在の仕事と共存する形でドローン事業を展開すること自体を否定はしないが、今後ドローンが独立した分野として確立する、あるいはスマホのように我々の生活に密着して溶け込むようになるためには、過去の何かの職種の延長線上から脱却し、ドローン独自の特性を十分理解したパイロットの登場が不可欠である。

 それをもってはじめてドローン本来のポテンシャルが存分に発揮されるようになるのではないかと思う。


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