2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月8日

 この社説は、9月の立法会選挙候補に中国が「忠誠の誓い」を求め、それをしない候補者の立候補資格をはく奪していることを報じるとともに、これは逆効果で、香港独立運動を強める方向になっている、と指摘しています。

 香港独立運動は、台湾独立運動と比較すると無いに等しいようにも思われますが、学生の28%、市民の17%が独立支持というのは、それなりの数字です。中国政府はこれを抑え込むために強硬策を講じていますが、この社説が言うように、逆効果になる可能性があります。中国共産党は権威主義政権であり、言論の自由があるような環境での政策展開は極めて苦手であるということでしょう。対台湾政策もうまくいっていません。

 中国国内での議論がどうなっているのか明確には分かりませんが、強硬策を主張しておけば安全ということで、強硬策にコンセンサスができやすい状況があるように思われます。香港は中国に返還され、中国の一部です。香港の問題は一国二制度の枠内で民主主義をどれくらい実践するかの問題であり、「中国の一部」ということに確認を求める行為は少し理解し難いものがあります。あまり強くもない香港独立運動を抑え込む相手と考えることは、その運動の存在の意義を認めることにつながりかねません。

 こういう中国のやり方を台湾は注目してみていると思われます。台湾世論は一国二制度であれ、何であれ、大陸と一緒になるのは御免蒙りたいとの感情をこの件で一層強めることは確実であるように思われます。「1992年コンセンサス」について、中国が好む方向で台湾側が歩み寄ることなど、考えられません。

 中国の対外政策は硬直化してきている傾向が看取されます。この香港の事例は小さいですが、その傾向を反映しているように思われます。核心的利益の範囲が台湾、チベットから南シナ海、尖閣を含む東シナ海などに拡張されてきており、かつ他国にその尊重を一方的に求めるのは、拡張主義と言うしかありません。

  
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