このワシントンポスト紙の社説は、まっとうな主張をしたいい社説です。
TPPについては、経済的メリット、デメリットの問題以上に、対中国との関係で国家安全保障上、戦略上の意義が重要であるとの主張はそのとおりでしょう。中国の行動について「教訓は既に学ばれた」というのは、米国の対中認識が全般的に厳しくなっていることをうかがわせます。
この社説は、TPPを支持しつつも、オバマ大統領任期中の議会批准はむずかしいとの見通しに立っていますが、まだオバマ政権は任期中の批准を議会に求めており、その政権の姿勢を強く支持するというのが本筋でしょう。来年1月20日までまだ時間はあります。
オバマ任期中の批准が望ましい
新大統領は大方、ヒラリー・クリントンになるでしょう。ヒラリーはアジアへの軸足移動を主張しましたし、そのなかでのTPPの持つ戦略的重要性もよく分かっているはずです。ただ民主党の候補者指名を争う中で、「今のままのTPP」は支持できないと言ってしまった経緯があります。再交渉は微妙なバランスを崩し、TPP全体を壊しかねません。
TPP批准に努力すると国際的に公約したオバマが食言したことにならないように、かつ就任直後にヒラリーに公約違反をさせないためにも、オバマの任期中の批准が最も望ましいでしょう。できなかった場合を想定した議論は、まだすべきではない気もします。
ドゴールは、米国は外交の場に国内政治の問題を持ち込んでくると批判したことがありますが、そんな状況が出てきています。日本としては、成立した合意は早く批准し、再交渉などありえない形にしておくことが肝要です。
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