2022年12月3日(土)

【五輪現地ルポ】リオデジャネイロはいま

2016年9月18日

»著者プロフィール
閉じる

佐々木正明 (ささき・まさあき)

ジャーナリスト、大和大学社会学部教授

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業後、産経新聞社に入社、大阪社会部、モスクワ支局長、リオデジャネイロ支局長、運動部次長、社会部次長を歴任。特派員として五輪・パラリンピックやサッカーW杯を取材した。2021年春から現職。著書に『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)、『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)。

 「帰還した当初、家族や友達が僕の姿をみて、『なんてことなの。なんて気の毒なの』といって嘆き悲しんだんだ。フランケンシュタインみたいな姿をしていたから、無理もない。でも、僕はみんなが取り乱したり、ふさぎ込んだりしているのが好きじゃない。昔から僕はポジティブな影響を他人に与えることに慣れていたからね。そうして、水泳を始めることが頭をよぎったんだ」

ブラッドリー選手(中)。右は日本の木村敬一選手(写真:アフロスポーツ)

 ブラッドリーは泳ぐことで自分を取り戻した。11歳の時、父から水泳を勧められ、海軍でも水泳チームの一員。ボルティモアの自宅に帰り、兄弟がプールに通う移動を手伝ってくれた。暗闇の中で「プールの中では、昔の自由な自分を思い出した」と語った。

 そして1年後、パラリンピックロンドン大会に出場。400メートル自由形で2個目の金メダルをとったのはちょうど、自分自身が両目を失った日の因縁の9月7日だった。直後にこんな言葉を残した。

 「この金メダルは僕が障害を克服したことを表す。この後、僕の人生に何がめぐってこようとも僕は勝利するだろう」

 ブラッドリーは前回チャンピオンとしてリオ大会にも出場した。やはり金を含む複数のメダルを獲得。自由形100メートルでは56秒15の世界新記録も出した。

 今年は視覚障害者用のPCを使って、著書も出版し、活動の場を広げ、同じようなハンディキャップを持つ人たちを励ましている。

イラク戦争で足を失った女性兵士

 今大会から採用されたトライアスロンでは、米軍女性兵士としてイラク戦争に派遣されていたメリッサ・ストックウェル(36)が出場した。24歳の時だった2004年、戦場で路肩爆弾を踏んでしまい、左足を失った。

 リハビリのため水泳を始め、2008年には競泳種目で北京大会に出場した。閉会式では米国代表の旗手も務めた。そうして今大会、トライアスロンの選手としてカムバックして見事、銅メダルを獲得したのである。試合後のインタビューで彼女はこう言った。

新着記事

»もっと見る